もしあなたが、
「接待を禁止する必要なんて、ウチにはない」
「社員はみんな真面目にやっている。問題ない」
──そう信じているのなら、それは極めて危険な妄想だ。今すぐ捨てろ。
あなたの会社の未来は、あなたの知らぬ間に、密室で静かに削られている。
見えないところで、あなたの社員が顧客による“接待”を受けているからだ。
そして、その社員は数日後の会議で、突然こう言い出す──
「現在、我が社の生産ライン稼働率は92%。余裕はありません。
しかし、◯◯社とは、特別に取引したほうがいいと思います」
その顧客は、自社にとって本当に重要な相手か?──
違う。数日前に酒と食事を奢ってくれた会社だ。
つまり、接待を受けた社員による、自己都合の提案である。
口では「会社のため」と言いながら、
心では「次の接待が楽しみだ」と考えている。
当然、会社の利益には一切つながらない。
企業としての合理性も、マーケティング戦略も──その瞬間に崩壊している。
なぜ、“接待”はマーケティングを殺すのか?
理由は単純明快だ。
接待を許すということは、会社の意思決定を“データと戦略”から、
“感情と人間関係”にすり替える行為だからである。
あなたの会社は、時間も金も人も使って、
マーケティングに取り組んでいるはずだ。
最新かつ高額なデジタルツールを導入し、ウェビナーを開催。
製品紹介動画を作り、週3回のメルマガ配信と、週1回の技術ブログの更新。
見込み客の温度感を測りながら、商談に持ち込もうと懸命に努力している。
──にもかかわらず、たった1人の営業社員が、
たった1回の“接待”で、すべてを台無しにする。
なぜか?
その社員は、“誰から酒をもらったか”で、
取引先の優先順位を決めるからだ。
あなたの会社の利益、ブランド、未来、市場競争力など眼中にない。
目の前にいる“感じのいい人”に向かって、ニコニコしながらこう言う。
「特別に値引きしておきますよ」
──それは、「仕組みで売る会社」を、「情で潰す」裏切り行為である。
あなたの会社の“マーケティングの死”は、こうして静かに始まっているのだ。
社員は「見えない場所」で確実に接待を受けていると考えよ
「いや、うちの社員に限ってそんなことはない」
──あなたがそう思っているのなら、その油断が会社を内部から腐らせる。
社員同士の社内恋愛が、誰も見抜けないのと同じだ。
社員が社外で接待を受けていても、誰も見抜けない。
いや──そもそも、見抜けないよう周到に仕組まれている。
たとえば、こんな事例がある──
✔︎「パパ友と飲みに行く」と報告していたが、実際は顧客企業の管理職と密会していた
✔︎「学生時代の同窓会」と言っていたが、会場は高級料亭。酒と寿司が並び、接待三昧
✔︎ かつて取引を断った企業が、数ヶ月後に管理職をキャバクラに招待。取引開始が決定
──これらはBtoB、半導体企業であれば、どこにでもある。
あなたの会社でも、すでに起きていると思って間違いない。
接待とは、「ありがとう」から始まる“ヤミ取引”である。
法的にはシロでも、経営的には真っ黒。
マーケティング的には、即レッドカードだ。
“たった1度のもてなし”という小さな出来事が、
会社の意思決定をねじ曲げ、未来をも奪うのだ。
接待を排除する社内ルールを、今すぐ導入せよ
甘い対応では、社内の腐敗は止まらない。
「念のための注意喚起」や「形式的なガイドライン」など無意味だ。
社員は“解釈の余地”を見つけ、抜け道を探し、堂々と裏口からすり抜けていく。
だから──接待は全面禁止にせよ。
以下を、すぐに制度として明文化しろ──
✔︎ 接待・供応の受け入れは全面禁止(言い訳も例外も許すな)
✔︎ 私的会食、とくに新規客との個別接触は全面アウト
✔︎ 発覚時は処分を徹底──降格・配置転換・賞与査定に即反映
✔︎ 会食履歴・接触先社名は、月次で報告。上長+法務でチェック
──ここまでやって、初めて社員はこう思う。
「あ、自分も常に見られているんだな」と。
そして何より重要なのは──
あなた自身、社長・経営層が最も厳しくあれ。
「自分は例外」
「交渉だから仕方ない」
──そんな言葉を吐いた瞬間、組織のモラルは音を立てて崩れ落ちる。
トップが断る。
トップが報告する。
トップが姿勢で示す。
それが、すべての始まりだ。
社員は上を見ている。
あなたが腐れば、全員が腐る。
放置すれば、あなたは──すべてを失う
接待の甘い酒。甘い女。甘い言葉。
それらを見逃し続けた会社の末路は、決まっている。
・接待企業ばかりを優遇した結果、長年のお得意さまを失う
・本来注力すべき顧客を後回しにし、未来の収益を逃す
・元社員が競合と癒着し、価格情報や製品戦略が漏洩する
・特別対応を繰り返すうちに、社内の価格ロジックが崩壊する
──これは、ただの「金の問題」ではない。
顧客の信頼。
市場の評価。
社員の士気。
ブランドの価値。
そして、あなた自身の経営者としての誇り。
すべてが、一気に消える日が来る。
そのとき、あなたはこうつぶやくだろう。
「なぜ、もっと早く手を打たなかったのか……」
今なら、まだ間に合う。
今すぐ動け。
接待文化を完全に排除し、
価値で選ばれ、論理で売り、戦略で勝つ企業へと変われ。
それが、半導体業界という戦場で、
勝ち続けるための唯一の道である。