もしあなたが、

「ウチは営業1本で売上の90%以上を占めている」
「この大手顧客がいれば、ウチは食っていける」
「他社が羨むレベルの“営業エース”が1人いる」

──そんなふうに思っているのなら、今すぐその幻想を叩き壊せ

なぜなら、
それは自分の首を自分で締めているに等しいからだ。

あなたのビジネスは、今、“たった1本の支柱”に命運を預けている状態。
そして、その支柱が折れた瞬間──
社員も、設備も、会社そのものも、一緒に崩れる。

販路が“1つしかない”状態は、ビジネスにおける自殺行為である。
なぜか?
販路が「1つしかない」企業は、例外なく崩壊するからだ。

これは空理空論ではない。
妄想でも、極論でもない。

実際に崩れ去った企業がある。
しかも、日本が世界に誇ったかつての“希望の星”だ。

それが──
あなたもその名を聞いたことがあるはずの、液晶パネルの雄。
株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)である。

依存構造はリスクを増幅させ、あなたの選択肢を奪う

マーケティングの世界には、こんな格言がある──
「マーケティングにおいて、最も危険な数字は“1”である」と。

この言葉を甘く見てはならない。
なぜなら、“1”は見えない地雷だからだ。
踏んだ瞬間に、あなたの会社は吹き飛ぶ。

✔︎ 売上の大部分を占める、たった1社の顧客
✔︎ 顧客との関係性をすべて背負っている、たった1人の営業エース
✔︎ 見込み客との接点が、展示会1つだけという販売方法

──これらはすべて、“1依存構造”の危険な症状だ。
そして、その構造に足を踏み入れた瞬間、会社は自らの自由を放棄する。

想像してみろ。
もし、明日こう言われたらどうする?

✔︎ 「来月から、30%の値下げに応じてくれ」
✔︎ 「御社との契約は、今期で終了とさせていただきます」
✔︎ “神の手”とまで称されたエース営業が、突然の退職を申し出てきた

──そのとき、あなたに残された手は、ひとつもない。

✔︎ 相手の要求に、唯々諾々と従うしかない。
✔︎ 利益は削られ、価格競争に巻き込まれ、赤字スレスレの受注地獄が始まる。
✔︎ しかもそれが「毎月」「毎年」繰り返される。“当たり前”のように。

そして最悪のケースでは──
開発体制も、製造ラインも、品質基準も、人材配置さえも、
すべてが“たった1社”に最適化された会社が出来上がる。

もはや、逃げられない。
身動きひとつ、取れない。
首輪をかけられた犬のように、ただ命令を待つだけの経営が続く。

その状況から脱出するには──
数年単位のリストラ、業務転換、新ブランドの立ち上げ……
地獄のようなリスクを、血を吐く覚悟で背負うしかない。

選択肢を失うとは、つまり、
あなたの経営から“自由”が消えるということだ。

JDIはApple依存の「1販路」で崩壊した

あなたは本当に、
ジャパンディスプレイ(JDI)の失敗の本質を理解できているか?
これは「経営不振」の一言では片づけてはならない重要な問題だ。

JDIは、スマートフォン用ディスプレイという武器を手に、
Appleとの取引で一気に成長した。

売上の5割以上が、超有名企業のApple1──
まさに「夢のような経営状態」だと、誰もが羨んだ。
だが、その「夢のような状態」は、長くは続かなかった。

2015年、Appleが有機ELパネルの採用へと舵を切った瞬間──
JDIの屋台骨は崩れ始めた。

巨額を投じた白山工場(石川県白山市)は、
稼働前から“過去の設備”となり、
主力製品は一夜にして“時代遅れ”になった。

その後は──

・再建計画は立てても立てても頓挫
・代替の収益モデルは一切機能せず
・Apple依存の販路構造は、ついに最後まで変えられなかった

そして、JDIは「国の税金で延命する」しか道が残されていなかった。
世界の競合は次々と新技術を投入し、
販路を分散させて成長していたのに、だ。

JDIは、“たった1本の販路に縛られた囚人”と化していた。
しかもその鎖は、自らの意志で巻きつけたものだった。

要するに──
1社に依存した企業の末路は、「死」である。

倒産や清算だけを指すのではない。
選択肢を失うという、企業としての“思考停止の死”である。

あなたの会社も、今すぐ販路戦略を見直せ

これは、他人事ではない。
今この瞬間も、全国の半導体企業がJDIと“同じ病”に蝕まれている。

✔︎ 販売は全て商社に丸投げ。社員はマーケティングという言葉すら知らない。
✔︎ 営業は属人化。成功も失敗も、すべて“個人の腕”に依存。仕組みは皆無。
✔︎ 売上の大半を、たった1社の顧客に握られている。

──この状態を「普通」と思っているのなら、
あなたの会社も、遅かれ早かれ沈む。

✔︎ 今が黒字でも関係ない。
✔︎ 取引歴が10年あっても、それは、今後が保証される理由にはならない。
✔︎ “神の手”と崇められる営業がいても──その1人が抜ければ、組織が瓦解する。

つまり、販路が「1つしかない」構造こそが、
未来を壊すトリガー(引き金)となるのだ。


販路“1本足打法”の時代は、完全に終わった。
いや──そもそもそんな時代は、最初から存在しなかった。
それは、あなたが信じ込んでいただけの“幻想”だったのだ。

最後に、ハッキリと言おう。

「マーケティングにおいて、最も危険な数字は“1”である」

──この格言を知らぬ半導体企業に、
この先、“勝ち続ける資格”などない。

  1. 参考:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21HS1_R20C16A6000000/ ↩︎