もしあなたが、

「技術さえあれば売上は勝手に伸びる」
「社長は黙っていればいい。営業は社員がやることだ」
「売れないのは、営業のスキル不足が原因だ」

──そう信じて疑わないのなら、その思考は今すぐ、頭から叩き出せ。
そして二度とその幻想にすがるな。

それは昭和の幻想だ。
いや、たまたま時代と噛み合っただけの“過去の成功体験”が生み出した、
今では機能しない常識である。

かつてはそれでよかった。
モノさえ作れば、商社が勝手に売ってくれた。
技術だけで勝負できた時代も、確かに存在した。

だが今、その“黙っていても売れる”という思考こそが、
ビジネスの現場で毒のように静かに企業を蝕んでいる。

これを放置すれば、何が起きるかは明白だ。

社員は方向性を見失い、
ブランドの印象はぼやけ、
顧客の記憶から会社の存在が消えていく。

気づいたときには、競合の社長に市場の信頼を奪われている。
静かに、確実に、あなたの信用は他人のものになっていく。

なぜ、そんな事態になるのか?
理由はひとつ──

今の時代、企業が選ばれる基準が変わった。
「何を言っているか」ではない。
「誰が言っているか」──その“声の主”こそが、売上のすべてを決めている。

顧客は、技術資料の正確さやパンフレットのビジュアルの良し悪しよりも、
その言葉が“誰の口”から発せられているかで、
信じるかどうか、契約するかどうかを決めている。


契約も、ジョイントベンチャーも、業務提携も、投資判断も──
あらゆる意思決定は、「この人の言葉は信じられるか?」という
直感と感情に支配されているのだ。


それがまだ理解できないというのなら、あなたにはちょうどいい教材がある。
最近の芸能界で起きた、これ以上ないほど象徴的な事件だ。

そう、永野芽郁の不倫騒動である。

永野芽郁のスキャンダルは、なぜここまで炎上したのか?

なぜ、あれほど女優・タレントとして抜群に好感度の高かった彼女が、
たった数日でスポンサーからも世間からも手のひらを返されたのか?

理由はひとつ。
彼女自身が築いてきた「透明感・純粋・素直」というポジショニングと、
実際の行動(二股不倫)が完全に矛盾していたからだ。


人は「イメージと現実のギャップ」に異常なほど敏感だ。
スキャンダルの内容以上に、
信じていたイメージを裏切られたときに、最も激しく反応する。

そして、その“清純イメージ”が、
企業や商品の信頼を支える土台になっていたとしたら──
スポンサーは火の粉が降りかかる前に撤退するしかない。

なぜなら、広告とは「この人が言うことなら信じられる」と
視聴者に思わせるための、“信頼の代行”システムだからだ。

つまり、清純派女優の不倫が発覚した瞬間──
彼女を通じて届けられていたはずの企業の信用が、一斉に崩れ落ちる。

ポジショニングとは、単なる自己紹介ではない──
“守るべき戦略”そのものである

永野芽郁は、芸能界で「清純派」という強固なポジションを確立していた。
それが本人の意図だったかどうかは関係ない。

世間がそう受け取り、彼女の“存在価値”として認識していた──
それこそがブランドの正体だ。

そしてそのブランドこそが、
彼女がスポンサーにとって「起用すべき存在」であり続けた最大の理由だった。

この“ポジショニング”という構造は、もちろん芸能界だけの話ではない。
同じ仕組みが、BtoBの現場──
とりわけ半導体企業の経営においても、驚くほど正確に当てはまる。


あなたはこう言っていないか?
「うちは技術で勝負している」「高品質こそが最大の武器だ」──と。

だが、その会社の“顔”である社長が──
顧客(クレーム)対応を他人任せにし、
SNSやメディアでの発信を完全に放棄し、
新製品すら他人の口から紹介させている。

そんな状態だったら、誰がその会社を信用する?

いくら技術やサービスが優れていても、
社長の態度ひとつで、会社全体の印象は一瞬で崩れる。

社長の態度、言葉、振る舞い──
それこそが、企業ブランドの“看板”そのものなのだ。

ジェンスン・フアンがパジャマで登壇したら──
エヌビディアは終わる

想像してみてほしい。

エヌビディアのジェンスン・フアンといえば、
世界最先端の半導体企業の象徴であり、
常に黒の革ジャン姿で登壇するカリスマ経営者だ。

では、なぜ彼は毎回、革ジャンを着るのか?
それは単なるファッションではない。

革ジャン=カリスマ・最先端・圧倒的自信──
彼はそのイメージを、経営者としての立ち位置で一貫して演出しているのだ。

もし彼が次のイベントで、突然Tシャツに短パン──
いや、パジャマ姿で登壇したらどうなるか?

投資家は「異常事態か?」と警戒し、
パートナー企業は「もう信頼できない」と身を引くだろう。

たった1回の“ズレ”で、株価は下落し、将来の案件も吹き飛ぶ。
それほどまでに、社長の見せ方=企業の信用そのものなのだ。

ポジショニングとは何か?
それは「自分をどう語るか」ではなく、
「どう存在しているか」を設計する戦略である。


服装、言葉づかい、姿勢、表情──
すべてが“ブランド”であり、“営業ツール”であり、
競合企業との差別化を訴えるための“武器”なのだ。

半導体企業でも同じだ──
社長の一貫性が、社員の“営業力”を10倍にする

これは芸能界だけの話ではない。
BtoB──特に半導体業界で戦う社長において、
ポジショニングの重要性は芸能人同様に高い。

なぜか?

顧客は、「会社の中身」よりも、
「会社を体現している社長」を見て、
取引の有無を判断しているからだ。


社長の発言、態度、服装、立ち居振る舞い──
そのすべてが会社の人格になり、社員たちが現場で戦うための“旗印”になる。

これは根性論ではない。精神論でもない。
科学的に再現性のある、ブランド構築の法則である。

✔︎ 社長が信頼されていれば、社員は名刺を差し出した瞬間に信用される
✔︎ 社長が一貫していれば、顧客は「他と比べる必要がない」と感じる
✔︎ 社長が発信していれば、顧客は「問い合わせ」ではなく「指名」でやって来る

つまり──
社長のポジショニングが明確で一貫していれば、
営業は“売り込む”のではなく“受け取る”だけで済む。


一方で、あなたが沈黙している間にも、
定期的に発信し、ブランディングに投資し続けている競合の社長たちは、
あなたの市場を奪い、案件を奪い、信用までもごっそり持っていっている。

静かに、着実に、戦わずして負ける──それが“沈黙の経営者”の末路だ。

社長よ、沈黙するな──ブランドになれ。自ら語れ。前に出ろ。

黙っている社長に、未来はない。
いま、沈黙している経営者は「存在していない経営者」と同じだ。

誰も、あなたの顔を知らない。
誰も、あなたの声を聞いたことがない。

顧客は、あなたの姿を思い浮かべることすらできず、
社員は、何を語ればいいのかも分からない。

結果──
会社の言葉は届かず、商談は決まらず、売上は伸びない。

共通の旗なき軍隊は、散る。会社も同じだ。
指揮官の姿が見えなければ、
組織は迷走し、信用は崩れ、商談は他社に奪われる。

ポジショニングとは、経営者が自社に与える“最強かつ最大の武器”だ。
それは、キャッチコピーでもなければ、スローガンでもない。
経営者という“人格”そのものを、市場に刻み込む行為である。

だからこそ──
迷うな。止まるな。すぐに動け。

発信せよ。姿を見せろ。
キャラを貫け。中途半端を捨てろ。

「何を言っているか」ではない。
「誰が言っているか」で決まる時代に、沈黙している者の居場所はない。

あなたが黙っている間にも、
ライバルは発信を続け、信頼を積み上げ、あなたの顧客を次々に奪っていく。

黙るな。沈黙は敵だ。
──この言葉を、A3用紙に印刷して、社長室のド真ん中に貼れ。