もしあなたが、
「スローガンやキャッチコピーを導入すれば売上が伸びる」
と本気で信じているのなら──
その幻想は、今すぐ叩き潰せ。いや、この瞬間に捨てろ。
でなければ、あなたの会社は、“気分だけマーケティング”の泥沼に沈んでいく。
なぜなら、その考え方こそが、
あなたの会社の売上を奪い、未来を閉ざす“最大の病原体”だからだ。
まるで、泥舟に乗って「このまま大海原を渡れる」と
本気で信じているようなものだ──沈むのは時間の問題である。
広告代理店が主導したキャッチコピーや企業スローガン。
それらは一見、“マーケティングをやっている風”を醸し出す。
社員はポスターを誇らしげに掲げ、社内は拍手喝采だろう。
だが、実態は違う。
それは、マーケティングの本質から目を逸らす“麻酔薬”にすぎない。
スローガンやキャッチコピーは「見せ方」にすぎず、「戦略」でも「仕組み」でもない。
そんなものに大金をかけるのは──
アルマーニのスーツで水泳大会に出場するようなものだ。
見た目はカッコいい。鏡に映る自分に酔えるだろう。
だが、競技には絶対に勝てない。いや、スタートラインにすら立てない。
言葉遊びに金を使うな──測定できない施策に未来はない
あなたは、自社が導入を検討中のキャッチコピーやスローガンが、
売上にどれだけ貢献するか──具体的に、数字で説明できるか?
できないはずだ。いや、絶対にできない。
なぜか?
それは、スローガンやキャッチコピーの効果など、“測定不能”だからだ。
✔︎ 見込み客が何社増えたのか?
✔︎ 新規商談が何件発生したのか?
✔︎ 結果、売上が何%伸びたのか?
これらの問いに「はい、具体的な数字で説明できます」と即答できないのなら──
その施策はただの、“幻想マーケティング”である。
にもかかわらず、なぜ多くの企業が、
スローガンやキャッチコピーに多額の予算を投下してしまうのか?
答えはひとつ──「気分」である。
✔︎ 「新しいスローガン、大企業ぽくてカッコイイよね」
✔︎ 「展示会のブース…スローガンのおかげで“イケてる感”が演出できました」
✔︎ 「世間から称賛されて、社員が前向きになったような気がする」
──これらは全て、“やった感”を得るためだけの“パフォーマンス”にすぎない。
効果はない。あるのは“売上が伸びている”、“成功している”という錯覚だけだ。
例えるなら、腹筋が割れて見える補正下着と同じだ。
見た目は変わった気がする。でも脱げば何も変わっていない。
だが恐ろしいことに、スローガン導入後は、こうした“称賛”が追い打ちをかけてくる。
社員──「見てください。SNSで話題になってますよ」
家族──「パパの会社、最近なんかカッコよくなったね」
同業者──「御社のスローガン、社長の想いが伝わってきます」
そして、あなたはこう錯覚する──
「褒められた」=「成果が出た」
はっきり言おう。それは完全な誤解だ。
快感はある。承認欲求も満たされる。
だが、売上には一切つながらない。
半導体社長、管理職よ──冷静さを取り戻せ。
褒め言葉は現実を変えない。数字だけが真実だ。
ADEKAの「地味だけど、すごい。」──なぜ失敗したのか?
実例を見てほしい。
半導体素材を手がける中堅企業、ADEKA(アデカ)の事例だ。
彼らは、スローガンとして「地味だけど、すごい。」を掲げ、
彼らにとって、実に60年ぶりとなるテレビCMを制作した。
社運を賭けたプロジェクトだったはずだ。
広告代理店にウン百万円を支払い、
テレビ局にウン千万円の放送料を払い、
プロのコピーライターに百万円近くを支払いスローガンを外注、
女優の生田絵梨花(元・乃木坂46)まで起用してCMを展開した。
※ 金額は推定
これを「本気じゃなかった」と言う人間はいない。
彼らは本気だった──だが、根本から間違っていた。
なぜなら、彼らの敗北は、
CMを流す前から──いや、企画段階から確定していたからだ。
以下、CM放送後の展示会で想定される、
典型的な“残念なやりとり”を紹介する。
ADEKA社員:
「弊社の半導体素材は、業界では高い評価を受けています。」
顧客:
「ADEKAさんのお噂、聞いてますよ。」
(とはいえ、どの会社も“自社の製品は優れてる”って言うよね…)
ADEKA社員:
「弊社は、“地味だけど、すごい”をスローガンに、営業活動を強化しています。
CMはご覧になりましたか?」
顧客:
「ええ、見ました。生田絵梨花さんが『地味にすごい』って言ってますよね。」
(でも…何が“地味にすごい”のだろうか? その“すごさ”は、ウチの課題解決に
どうつながるのか?意味が分からない。…ウチには関係なさそうだ。帰ろう。)
──これが現実だ。
抽象的な言葉(スローガンやキャッチコピー)は、売上増につながらない。
伝えたい相手に、何を・どう届けたいかが定まっていない言葉は、
ただの自己満足であり、顧客の前で発する“大声の独り言”でしかない。
そして言っておく。
自社で決めたスローガンやキャッチコピーを、
社内外で繰り返し唱える企業ほど、市場では真っ先に無視される。
売上を伸ばしたいのなら、まずは顧客の悩みや課題に徹底的に向き合え。
✔︎ これは誰のための製品・サービスなのか?
✔︎ この技術を使うことで、顧客の課題をどのように解決できるのか?
✔︎ 課題を解決することで、顧客にはどのようなメリットがあるのか?
これらが一言で伝わらないスローガンは、ただの騒音だ。
営業社員の口を通じて放たれる、空虚なスローガンは、
顧客の耳を素通りする。結果──顧客の記憶に残らない。
キャッチコピーの前に、マーケティングをやれ
最後に、あなたに伝えたい。いや、事実を突きつけたい。
✔︎ スローガンやキャッチコピーが売上にどれほど貢献するのか──測定できない
✔︎ 家族や社員、同業者にどれだけ褒められても──売上は1円も伸びない
✔︎ 今、あなたに必要なのは、PDCAを回せる“仕組みとしてのマーケティング”だ
あなたの会社が本気で追い求めるべきは、
“カッコいいスローガン”でも、“女性ウケのいい言葉”でも、
“響きが良さげなキャッチコピー”でもない。
必要なのは──
見込み客を惹きつけ、行動させ、財布を開かせる「仕掛け」と「導線」だ。
つまり、顧客が、“契約したくなる流れ”をつくること。
何を、いつ、どんな順番で伝えれば、
相手が「検討しよう」「相談してみよう」と自然に動き出すか──
その一連の流れを、最初から設計しておくということだ。
思いつきの言葉(スローガンやキャッチコピー)では、絶対に成果は出ない。
マーケティングとは、“顧客が買うまでの道筋”を作り込むための仕事なのだ。
広告代理店に金を払い、気分が上がるだけのスローガンに投資している暇はない。
その金で、見込み客を10社増やせ。その時間で、顧客の課題や悩みを100件集めろ。
マーケティングを知らずして、売上が上がる時代は──もう終わった。
今もなお“やらない”会社は、これから確実に市場から取り残されていく。
代理店が主導する“言葉遊び”は、もうやめろ。
今こそ、“データ”と“戦略”という武器を手に、戦場に立て。