もしあなたが、こう考えているのなら──

「自社の強みを活かした製品をつくろう」
「差別化のカギは“技術力”だ」
「まずは社内でアイデアを出して、開発を進めよう」

その考え方こそが、あなたの会社に“静かな死”をもたらしている。
厳しいようだが、それが現実だ。

だが安心してほしい。
この記事は、ただあなたの価値観をぶち壊すために書かれたものではない。
“売れる仕組み”を構築するための武器を、ここであなたに手渡す。

新製品・新サービス──
それは「自分たちで考えるもの」ではない。
むしろ、「顧客に作らせる」ことこそが、唯一の正解だ。

「顧客に作らせる? そんなバカな」と思ったかもしれない。
だが、それこそがいま、市場で勝ち続けている
中小製造業企業にとっての“当たり前”なのである。

新製品/サービスは、顧客に作らせよ

結論から言おう。
新製品は“自社内で完結”させてはならない。顧客に作らせろ。

これはスローガンでもなければ、煽りでもない。
企業として勝ち続けるために、絶対に守るべき“原則”である。

断言する。
売れない製品/サービス──その原因のほとんどは、“あなたの妄想”から始まっている。

覚えておいてほしい。
「顧客が欲しがっていないモノ」には、1円の価値もない。

どれほど最先端の技術を詰め込もうが、
どれだけ社内で拍手喝采が起ころうが、
市場に無視された瞬間、それは“産業廃棄物”である。

「自社視点」で製品をつくる企業は、必ずズレる

なぜ、中小半導体企業にとって「自社視点」は致命的なのか?
理由は、実にシンプルだ。

✔︎ 自社の“強み”とは、過去の成功体験にすがる幻想にすぎない
✔︎ 顧客は、「あなたの会社の強み」なんて1ミリも興味がない
✔︎ 売れる製品/サービスとは、顧客の“今この瞬間の課題”を解決する唯一の答えである

たとえるなら──
半導体装置メーカーが「ウチのEUV技術は世界最高です!」と誇らしげに叫ぶ。
だが、目の前の顧客は、7ナノ以下の微細加工なんて求めていない。
むしろ「ArFエキシマのDUVで十分」と考えている。

そう──
7ナノを作る技術すら持っていない顧客に、EUVを売り込んでいる状態なのだ。

このチグハグ感こそ、“ズレた開発”の象徴。
これが、日本の半導体企業が陥っている残酷な現実である。

「すごい技術」では売れない。
顧客に「それが欲しい」と言わせて、初めてビジネスは動き出す。
すべては、“顧客が何を求めているか”に尽きるのだ。

JSファンダリの悲劇に学べ──理念では飯は食えない

典型的な失敗例がある。
それが、2022年に「日本初の独立系ファウンドリ専業会社」として
華々しく登場したJSファンダリだ。彼らの思考は、こうだった。

「日本の半導体サプライチェーンは危機的だ」
「国産ファウンドリの復活は、業界の悲願だ」
「だから、我々がその使命を果たすべきだ」

──確かに、理念としては美しい。志も立派だ。
だが、そこに“顧客の欲しい”は一切存在していなかった。

オンセミからの受託案件が終了すると、売上は100億円 → 26億円へと急落。
最終的には161億円の負債を抱え、2025年7月14日、破産。

なぜこうなったのか? 答えは明白だ。
顧客に確認することもなく、自分たちの都合だけで市場を解釈していたからだ。

彼らは、顧客が自分たちに発注してくれるはずだと“妄信”していた。
そしてその妄信を貫き続け、顧客の声を拾う努力を放棄していたのだ。
では逆に、いま勝っている企業は何をしているのか?

✔︎ 開発会議に営業社員を同席させ、現場の“生の声”を反映
✔︎ 展示会で顧客の反応を拾い、そのまま戦略の柱に据える
✔︎ 「技術ベース」ではなく、「課題ベース」で開発を設計する

この違いがわかるか?
これこそが、“技術力の押し売り”と、“顧客視点の戦略”との決定的な境界線である。

顧客の声を起点にすべてを設計せよ

では、これからの中小半導体企業は何をすべきか?

答えは明確だ。
「顧客を起点に考え、顧客に作らせる」──この設計思想へ、ただちに転換せよ。

✔︎ アイデアは、社長のひらめきではない。顧客の頭の中にある。
✔︎ ヒントは、会議室のホワイトボードではなく、営業社員のノートに書かれている。
✔︎ 展示会は「プレゼンの場」ではない。顧客が“買いたい理由”を口にする唯一の場所だ。

今すぐやるべきことは、社内ブレストでも、技術検討会でもない。
「顧客の声」を拾い、それを軸に製品・サービスを再構築することだ。

そうしなければ──
あなたの会社は、誰からも必要とされない製品/サービスを、
血眼になって売り込む“哀れな企業”になるだけだ。

自社の強みにすがるな。
それは、過去の自分にすがりつくのと同じだ。

あなたが戦うべき相手は、いまこの瞬間の市場。
あなたが聞くべき声は、技術者の仲間内トークではなく、“顧客の本音”である。

売れる製品/サービスを生み出す鍵は、会議室のブレストでも、先端技術でもない。
“顧客の声を拾う耳”こそが、最高の開発ツールである。

「売れる製品/サービスは、顧客が作ってくれる」──
この真理に気づいた者だけが、次の半導体ビジネスの覇者となる。