もしあなたが──

「技術者が開発に集中できる環境を整えることが社長の仕事だ」
「営業は営業、技術は技術。それぞれが自分の役割に専念すべきだ」
「設計・開発・製造こそが、半導体エンジニアの本来の仕事だ」

などと考えているのなら──今すぐその思い込みを捨てろ。
その考えこそが、あなたの会社を衰退させている“原因そのもの”だ。

いま、あなたがやるべきことは──
技術投資ではない。
新製品やサービスの開発でもない。
営業社員のセールストーク研修でもない。

1年に10日間、技術者を営業の現場に立たせよ。
顧客と直接会い、話し、悩みを聞かせるのだ。

たったそれだけで、会社の競争力は一変する。
たったそれだけで、売れない理由が消え去る。

顧客と接点を持たない技術者は、“自分たちが良いと思うもの”を作ろうとしてしまう。
スペックの高さ=価値だと信じ、顧客の悩み・課題・要望からはどんどんズレていく。

だが、顧客を知る技術者は違う。
課題の本質を理解し、顧客の声に応じて“求められる技術”を提供できる。

そんな技術者が組織の中に増えていけば──
会社全体の“顧客対応力”が向上し、市場での競争力も着実に強化されていく。

その努力は誰のため?──技術者の盲点

なぜ、技術者に「営業」をさせるべきなのか?
理由は、至ってシンプルだ。

多くの技術者が、顧客と直接会話する機会もないまま、
設計や開発に従事している。

いや、もっと言えば、
「顧客がどんな課題を抱えているのか?」「何を求めているのか?」──
そういった本質的な情報を知らぬまま、とにかく目の前のタスクをこなしているのだ。

彼らは、図面をにらみ、仕様書と格闘し、スペックの0.1%向上を追いかける。
もちろん、それ自体に問題があるわけではない。
技術者として大切な姿勢のひとつだ。

だが、その努力は──いったい誰のためのものなのか?
本当に、それは顧客の悩みを解決するための努力と言えるのか?

結局それは、
自分たちが「良い」と思い込んでいるスペックを追いかけるだけの──
独りよがりな“自己満足の努力”になっていないだろうか?

「スペックを上げれば売れる」
「機能を足せば、顧客は喜ぶ」
──そんな思い込みのまま突き進む姿勢こそが、
ズレた製品やサービスを生み出してしまうのだ。

この状態は、たとえるなら──
GPSもコンパスも持たずに航海している船長と同じだ。
目的地もわからぬまま、ただ全速力で進み続けている。

いくら努力しても、進む方向が間違っていれば──
その努力は成果にはつながらない。それどころか、すべてが無駄になる。

“商談体験”が、技術者を変える

では、「技術者に営業をさせる」とは、具体的に何を意味するのか?

当然ながら、ここで言う「営業」とは──
名刺を配ったり、パンフレットを手渡したりすることではない。
展示会で立っているだけの“お飾り”でもない。

技術者自身に、“現場の商談”に立ち会わせること。
つまり、実際の営業現場に同行させ、顧客のリアルな悩みや課題と
正面から向き合わせるのだ。

✔︎ 顧客は、何に困っているのか?
✔︎ なぜ、競合他社を選んだのか?
✔︎ 自社の製品やサービスに、何を期待しているのか?

──こうした“生の声”を、営業のフィルターを通さずに、
技術者自身が直接聞き取り、そのまま受け止めさせる。

もちろん、営業未経験の技術者に、いきなり1人で商談させるのは酷だ。
だからこそ、技術者には営業社員を1人、“補佐役”として同行させよ。

資料作成やアポイント、段取りなどの準備は営業社員が担当する。
だが、実際に話すのは技術者。営業はあくまで裏方に徹すること。

そして、いざ現場で顧客と真正面から向き合ったとき──
技術者の中に、これまでなかった視点が生まれる。

「これは、スペックの優劣の話じゃない」
「顧客は課題を解決したいだけなんだ」
「自分の技術は、そのために使うべきなんだ」

──こうした気づきが芽生えた瞬間、
技術者の仕事は“自己満足”から“顧客価値の創出”へと一気に変わる。
その結果、会社にも大きな変化が起こる。

✔︎ 技術者が、顧客視点で価値あるアウトプットを出すようになる
✔︎ 製品・サービスが、“現場で役立つもの”へと進化する
✔︎ 「この会社、ちゃんと現場をわかってる」と市場に認知される
✔︎ 顧客があなたの会社を“サプライヤー”ではなく“ビジネスパートナー”と見なすようになる
✔︎ 結果として、受注単価は上がり、営業の商談率も大幅に改善される

しかも、この戦略には研修費用は一切かからない。
それでも、まだ「やらない理由」があるだろうか?

半導体産業は「製造業」から「サービス業」へ

もはや半導体産業は、単に「モノを作る製造業」ではない。
顧客のビジネス成果に貢献する、
「ソリューション提供型のサービス業」へと変貌している。

この現実を、まずは技術者にしっかりと理解させなければならない。
「良いモノを作れば売れる」──そんな時代は、すでに終わっている。

そして技術者自身がこの変化の本質を理解し、
日々の業務の中で「顧客起点の思考」を働かせられるようになったとき、
あなたの会社は市場で突き抜ける存在になる。

では、技術者の意識を変えるために、
会社としてまず何に取り組むべきか?
以下の具体的なアクションを実行に移せ。

✔︎ 技術者には「1年に10日」、営業の現場に同行させること
✔︎ 技術者が商談で得た気づきや感想を、必ず社内にフィードバックさせること
✔︎「技術は顧客のためにある」という意識を、組織全体に浸透させること

半導体企業の競争力は、スペックや技術力、価格そのものにあるのではない。
“顧客の悩みを理解し、応えられる技術者”がいるかどうか──それがすべてだ。

最後に、はっきりと言う。

今すぐ、技術者に「年10日の営業活動」を命じよ。
わずか10日間の体験が、あなたの会社の未来を根底から変えていく。

これこそが──
技術力やスペック、価格が横一線に並ぶ半導体市場で、
あなたの会社が勝ち続けるための、唯一の戦略である。