もしあなたが、「売上を伸ばしたい」と願いながら、
毎日、新規顧客ばかりに血眼になっているのなら──

それは、5メートル先のマクドナルドを無視して、
わざわざ50キロ先の店を目指して歩き出すようなものだ。

地図も持たずに、山を越え、谷を越え、汗だくでさまよう。
その途中、何度もあなたに声をかけてくれるのが、
すでに契約を交わした顧客たちである。

売上を増やしたいのなら、“契約直後”の瞬間にこそ注目せよ。
このタイミングこそ、見込み客ではなく、
すでに財布を開いた顧客が、あなたに最も強い関心と信頼を寄せている状態なのだ。

ここで何も提案しないのは、
元栓を開けておきながら、蛇口をひねらずに帰るようなものだ。

売上という札束は、努力した人に降ってくるのではない。
準備と仕掛けを整えた者だけが、それを受け取れるのだ。

契約直後──それは、顧客の関心が最高潮に達する“黄金タイム”だ

人は契約を終えた直後、特有の“高揚感”に包まれる。
これは、心理学でも明らかになっている自然な現象だ。

脳の中で“契約してよかった”という快感が高まり、満足感とともに、
「他に必要なものはないか?」という自己確認モードに入る。

つまりこのタイミングは、財布の紐もゆるみやすく、
社内決裁もスムーズに通りやすくなる──
最も合理的な追加提案のタイミングである。

これは恋愛にもよく似ている。
デート1回目が成功しても、2回目の誘いをしなければ、
相手はすぐに他の男と出かけてしまう。

当然のことだ。
タイミングを逃せば、高揚感も満足感も、水のように蒸発していく。

顧客も同じだ。
「何かあればご連絡ください」と言い、何も売り込まずに帰り支度をする営業社員。
それは、自ら売上のチャンスを放棄し、競合にバトンを渡しているようなものだ。

そう、あなたが何もしないうちに──売上は静かに、確実に、競合に奪われている。

驚愕──
「ポテトもいかがですか?」だけで百億円。売上は“仕掛け”で決まる

世界中で売上を叩き出す、あのマクドナルド。
その店員が放つ、たった一言──「ポテトもいかがですか?」

信じがたいかもしれないが、この“ひとことセールス”だけで、
日本国内で年間100億円前後の利益を生み出している。

1実際、マクドナルド全体の年間利益の15~40%が、
この、ポテトの追加販売によって、得られている。

たった一言。たった数秒。そして、追加コストはゼロ。
これだけで、企業の利益の数十%を支えることが可能なのだ。

これらの事実が示しているのは──
「契約直後=売上最大化の瞬間」である、という疑いようのない現実だ。

マクドナルドはこれを“気の利いた店員”の手腕に任せてはいない。
全店舗で「仕組み」として義務化している。
そう──すべては、“仕掛け”の力なのだ。

2024年の、日本マクドナルドの純利益は319億円。
このうち、47億~127億円(年間利益の15~40%)が、
「ポテトもいかがですか?」の一言から生まれた計算になる。

つまり──
売上とは「気合い」で勝ち取るものではない。
設計されたセリフとタイミングが、それを引き寄せるのだ。

半導体企業における追加販売の具体例

「でも、ウチの業界じゃそんなの通用しない」
そう思ったのなら──1度、立ち止まってほしい。

マーケティングの原理原則は、業界に関係なく通用する。
重要なのは、「次の一言」をあらかじめ設計しておくかどうか──
それだけだ。

例えば──

✔︎ シリコンウエハー用の黒鉛製品を納品した直後に──
 「イオン注入工程でも黒鉛製品をお使いですよね?」

✔︎ CMPスラリー供給装置を販売した際に──
 「薬液も提携ルートで一括手配できますが、いかがでしょう?」

✔︎ 半導体製造装置向けの空気圧機器を納品したタイミングで──
 「FPD製造装置向けはいかがですか?同じ仕様で対応可能です」

これらはすべて、
“たった一言”を添えることで開かれる、売上の扉だ。

もちろん、即決はされない。
だが、「選択肢の1つ」として顧客の心の中に残るだけで、
後の受注率は劇的に変わる。

さらに、もしあなたの製品が、
顧客がいま使っている競合製品より少しでも安い、あるいは納期が早いのなら──
競合の売上を、まるごと奪うことだって可能なのだ。

覚えておけ。必要なのは営業トークの巧みさではない。
“仕掛けられた導線”と、“忘れずに放たれる一言”だけだ。

“売った後が本番”の思想を持て──これが成長企業の絶対法則だ

契約書にハンコをもらって、ホッとひと息ついているその瞬間──
顧客の財布は、まだ開いたままだ。
そして、解決できていない課題は、まだそこに残っている。

売ったら終わり、ではない。
むしろ、売った“その瞬間こそ”が、本当のスタートラインだ。

これが、右肩上がりを続ける企業が共通して持っている“思考様式”である。
営業コストはゼロ。販促費もゼロ。
必要なのは、「次の一手をあらかじめ用意しておく」という仕掛けのみ。

さあ、契約直後に、もう一度売る仕組みを、あなたの会社にも導入せよ。
それこそが、中小の半導体企業が、次のステージに進む唯一の道なのだ。

  1. https://shopney.co/blog/how-mcdonalds-mastered-cross-selling-to-add-15-40-in-revenue-how-you-can-too/?utm_source=chatgpt.com ↩︎