AIは“おもちゃ”にすぎない。社長が踊らされてはならない

もしあなたが──
「AIを導入すれば売上がアップする」
「我が社もAI人材を採用すべきだ」
「生成AIこそ営業強化の救世主だ」

などと本気で信じているのなら──
それは、子どもに知育玩具を与えれば、東大に受かると信じているのと同じである。

目を覚ませ。
マーケティングを知らぬ者にとって、AIは“おもちゃ”だ。
社長がおもちゃで遊んでどうする?

あなたがAIの最新情報に夢中になっている間に──
競合は、勝つための“戦略”を着々と練り上げている。

たしかにAIはすごい。
ChatGPT、Claude、DeepSeek、Gemini、Grok……。

一見すると、すべての業務が効率化され、売上が勝手に伸びるように思える。
しかし、それは幻想だ。

あなたの会社が負けているのは、AIがないからではない。
勝つために必要な“戦略”が、最初から存在していないのだ。

AIを導入した企業の95%が「失敗」している

これは私の思い込みではない。
データに裏打ちされた冷酷な現実である。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査
『The GenAI Divide: State of AI in Business 2025』によれば、
AIを導入した企業の95%が、期待した成果を出せていない。1

つまり、ほとんどの企業がAI導入で失敗しているということだ。
理由は明白である。

✔︎ AI予算のほぼ全てを、営業とマーケティングに注ぎ込んでいる
✔︎ AIを売上増につなげる方法がわからず、“なんとなく便利”レベルで終わっている
✔︎ 経営陣の“AIがあれば何とかなる”という安易な発想が、現場を迷走させている。

実際、多くの企業が「売上アップ」や「顧客獲得」のために
AIを導入しているが、目立った成果にはつながっていない。

一方で、明確な成果が出ていたのは──「バックオフィス業務の自動化」だった。
そこでは、ROI(投資対効果)が最も高くなる傾向があることが確認されている。

つまり、AIは「売上を生む装置」ではない。
雑務を減らすための、ただの「便利グッズ」にすぎないのだ。

だが、多くの社長が勘違いしている。
「売上増のためにAIを使えばいい」と思い込み、
莫大な金と時間を、“前線”ではなく“武器”に注ぎ込んでいる。

これはまさに──
設計図もないのに、最先端の製造ラインをフル稼働させているようなものだ。

結果?
不良品が山積みになるだけである。

AIは“自社の戦略に従わせる”ための道具だ

半導体業界にも、今、AI導入の波が押し寄せている。
多くの社長が、焦燥と混乱のなかで決断を急がされている。

話題のAIツール、そして導入を急かすベンダーの声──
あなたの意思決定も、そうした“外圧”に影響されてはいないだろうか?

だが、それに踊らされている限り、競争には勝てない。
経営の主導権は、常に“あなた自身”が握らねばならない。

AIも、動画も、SNSも、販促資料も──
すべては“戦略”に従属すべき「下級兵士」にすぎない。

戦場の勝敗を決めるのは、
「どんな兵器を持っているか」ではない。
重要なのは、“いつ、どこで、どう使うか”だ。

その答えを──あなた自身が描けているだろうか?
その設計図こそが、“戦略”という名の武器である。

いま、あなたがやるべきことは──明確な「勝ち筋」を描くことだ。
そのために、まずは以下“3つの問い”に答えねばならない。

✔︎ どの市場を攻めるのか?
✔︎ どの顧客を狙うのか?
✔︎ どんな価値を差し出すのか?

この“勝ち筋”が定まっていない企業が、AIを導入しても──意味はない。

それはまるで、
地図も運転免許も持たない部下に、フェラーリを渡し、
「とにかく急げ」とだけ命じて山道を走らせるようなものだ。

待っているのは、崖からの転落である。
そして──落ちてからでは、もう遅い。

AIの最新情報を追い続けることは無意味だ

経営者は、AIの情報収集に時間を費やしてはならない。
経営者が本当に向き合うべきは、「勝つための戦略」を自ら構築する力である。

AIの最新トレンド?
ChatGPTの使いこなし術?
話題の生成AIツール?

──そんなものは、AIを“魔法の杖”と勘違いしている競合に任せておけばいい。

彼らは、マーケティングの本質を知らない。
だからAIを導入しても、売上強化には一切つなげられない。

あなたが果たすべき使命は明確だ。
どの市場を狙い、どんな顧客に、何を届けるのか──その軸を決めること。

ツールに気を取られていては、その軸は定まらない。
今、学ぶべきは「自社がどう勝つか」の構図である。

AIは、正しい“戦略”があってこそ機能する。
つまり──AIは「戦術」にすぎない。
そしてあなたは、“戦術家”ではなく「戦略家」でなければならない。

AIをどう使うかではない。
どの市場で、どう勝ち切るかを描けるかどうか。

その力こそが──
競争の激しい半導体市場で、あなたが勝ち続けるための、
唯一のマーケティング戦略である。

  1. 参考:MIT研究:企業AI導入の95%が利益化に失敗、投資効果への深刻な疑問
    https://oneword.co.jp/bignite/ai_news/mit-study-95-percent-corporate-ai-pilots-fail-profitability/ ↩︎