あなたの会社は、営業社員が放つセールストークを“必殺技”とでも思っているのか?
「うちの営業は話が上手いから大丈夫」──
そう信じている経営者や部長が、いまだに後を絶たない。

だが、現実を直視せよ。

✔︎ セールス資料を読み上げても反応ゼロ
✔︎ 名刺交換だけで終わる商談
✔︎ 展示会後のフォローは音信不通

それもそのはず。相手は、冷めきっているのだ。

冷蔵庫から出したばかりのカチカチ氷に、
いきなり熱湯トークを浴びせているようなもの。
結果はお察しのとおり──「ジュッ」と蒸発して、何も残らない。

──なぜ、気づかない?

“温まっていない見込客”にトークを仕掛けても、成約など起きるはずがない。
これはもはや営業以前の“準備不足”であり、構造上の敗北でもある。

営業力の時代は終わった──いま必要なのは、顧客の「温度設計」だ

かつては、「営業力=企業力」と言われていた。
だが今、顧客の購買行動は完全に変わった。

✔︎ 営業に会う前に、すでに比較検討を終えている
✔︎ 技術者も購買担当者も、自分で調べて決めている
✔︎ 「聞く」よりも「検索」が圧倒的に優先されている

つまり──商談は、営業が会う前に始まっている。
いや、勝負すら“会う前”に決まっているのだ。

ここで問う。
あなたの会社は、その“前段階”を設計できているか?

「会ってからが勝負」ではない。
“会う前に、どれだけ顧客の心を温めておいたか”で、勝負はつく。

この事実を、
マーケティングの世界では「リードナーチャリング(見込客の育成)」と呼ぶ。

だが、日本の半導体企業の多くは、いまだにこれができていない。
それどころか──
「マーケティング=広告」だと勘違いしている企業すら存在する。

まるで、丸腰で宮本武蔵に挑もうとするようなものだ。
──勝てるはずがない。

セールストークの前に顧客の“温度を上げる”──3つの具体策

成功している企業は、営業の「前」に勝負をつけている。
自社セールストークの修正や改善には力を入れていない。
顧客の“温度を上げる”ことで成約の下準備をしているのだ。

では──あなたの会社はどうすべきか?
ここでは、今すぐ実行すべき3つの温度戦略を提示する。

1.ランディングページで「発火装置」を仕込め

最初にやるべきは、受け皿の設計だ。
見込客が「ちょっと気になるな」と思った瞬間、
即座に“問い合わせ”“資料ダウンロード”“無料相談”へ導く導線を設置せよ。

これは絶対に後回しにしてはならない。
なぜなら──温まった顧客を逃すことほど愚かなことはないからだ。

たとえば、ある企業が「半導体 設計」でGoogle検索をかけたとする。
そのとき、あなたの会社に“受け皿”がなければ?──
あなたの会社の存在は、この世にないも同然だ。

検索結果に出ない=選ばれない。
“顧客の検索を拾うWebページ”がなければ、売上は永遠に伸びない。

田んぼにいくら米が実っても、鎌がなければ収穫はできない。
だからこそ、まずはランディングページ(=発火装置)を作れ。

🔍ランディングページとは?
ホームページが「会社全体の情報が載った玄関」だとすれば、
ランディングページは「1製品・1ターゲットに絞った“受注専用の特設ページ”」である。

これはコストではない。
「金を生むための金」である。ケチるな。

2.メールやSNSで「再加熱」せよ

人間は、忘れる。必ず忘れる。
あなたの会社がどれだけ良い印象を残しても、顧客の記憶は2週間ほどで風化する。

だから、再加熱せよ。
見込客の頭に、「この会社、よく見るな」「また出てきたな」という印象を焼きつけろ。

✔︎ 月1で技術ニュースレター(A4用紙1枚でOK)を郵送
✔︎ SNSで有益な投稿をしたら、ターゲット顧客に個別連絡
✔︎ 資料請求者には、週5回メールを送信することで関係構築

ここで大事なのは、“反応があるか”ではない。
“存在を覚えてもらえるか”である。

あなたが思っている以上に、顧客はあなたを忘れている。
記憶に残らない企業は、比較検討の土俵にも上がれない。

3.技術コンテンツで「信頼の種」を蒔け

最後にやるべきは、「種まき」だ。
これは中長期の布石。
あなたの会社を顧客の心に根付かせるための戦略である。

✔︎ 技術者が喜ぶホワイトペーパー
✔︎ 購買担当が参考にするコスト比較記事
✔︎ 設計者向けの省電力設計ノウハウ解説

こうした“役に立つ情報”を提供することで、見込客はこう思う──
「この会社、わかってるな」と。

この一言が出た瞬間、信頼は芽生える。
信頼は、価格やスペックを超える最強の営業資産である。

今すぐの売上になるわけではない。
だが、ここで顧客を満足させることに成功した場合、
それは半年後、1年後に見積依頼という形で返ってくる。

マーケティングとは、信頼の“種まき”と“刈り取り”を両立させる戦術である。

マーケティングは、営業の“難易度”を下げるために存在する

マーケティングとは、“営業のオマケ”ではない。
営業をラクにするための“戦略装置”である。

あなたの会社がやるべきことは、営業のセールストークを磨くことではない。
営業のセールストークの出来に売上が左右されない、“仕組み”を作ることだ。

そのために、やるべきことは明確だ──

✔︎ まず、「発火装置=ランディングページ」を作れ。
 顧客の興味が高まった瞬間を逃さないための、“刈り取り口”を設計せよ。

✔︎ 次に、「記憶の再加熱=継続接触」を仕込め。
 顧客の忘却を防ぎ、関係を維持することで、
 あなたの会社の存在を顧客の頭に定着させよ。

✔︎ そして最後に、「信頼の種=技術コンテンツ」を撒け。
 顧客との信頼を育むため、その後の契約受注を実現するための種まきを怠るな。

これらをやらずに、営業だけで勝とうとするのは──
モハメド・アリに丸腰で勝負を挑むようなものだ。

勝てるわけがない。
生き残れるわけがない。

さあ、“営業の限界”を超えよ。

売上は“セールストークの上手さ”ではなく、
“見込客の温度の高さ”で決まる時代なのだ。