あなたは、自社のマーケティングを「大企業の広報出身者」に任せてはいないか?──
いや、もっと深刻なのは、その人物をマーケティング責任者
経営戦略の中核ポジションに据えてしまっているケースだ。

もしあなたが、
「広報出身なら“発信”が得意だし、マーケティングにも向いているはずだ」
と考えているのなら、それは致命的な誤解である。

マーケティングとは──
売上に直結する“仕組み”を構築する仕事だ。

一方で、広報の役割は、メディアを通じて世論に“好印象”を与えること
つまり、目的も手段も、まるで別の種目である。

私はここで、はっきりと言おう。
その人材配置は今すぐに見直せ。
必要なのは、降格か異動、場合によっては解雇だ。

広報出身者にマーケティングを任せるのは、
“戦場にピクニック気分で現れた兵士”に、部隊を預けるようなもの。

のんきに「広告代理店との雰囲気づくり飲み会」を企画したり、
「SNS代行業者との“バズる投稿”会議」に時間を割いているような状態では、
あなたの会社は年商増を実現することはできない。

いま、半導体企業にとってのマーケティングとは、
“会社の成長エンジン”であり、誤れば企業全体が沈む“操縦席”でもある。

その戦場に、
「社内報の延長線上」から来たような人材を送り出してはいけない。
成果は出ない。むしろ、組織の足を引っ張る。

広報出身者の「広報脳」が企業を壊す──3つの典型症状

1.社内SNSが“働く女性のキラキラ日記”になっている

「仕事も家庭も充実しています!」──その投稿、採用ページなら効果的だろう。
だが、いま、その発信は製品販売を目的とした公式アカウントからではないか?

顧客が欲しているのは、
女性社員の自己実現の成功報告ではなく、課題解決のための具体的な証拠である。
情緒ではなく、エビデンス。演出ではなく、導入実績。

もし、女性の採用強化が目的であれば、
採用専用のアカウントを立ち上げ、そこに特化した発信をすべきだ。

「売る」と「採る」は目的が違う。
目的が違うなら、チャンネルを分けろ。発信内容も変えろ。

ひとつのアカウントに全部載せていては、誰にも刺さらない。
全方位にボケるだけだ。

2.KPIが「いいね数」「フォロワー数」「チャンネル登録者数」になっている

その数字、売上につながっているのか?──
断言できる。答えは「ノー」だ。

問い合わせゼロ、商談ゼロ、売上もゼロ──
キラキラ数字(いいね数・フォロワー数・チャンネル登録者数)の墓標が並ぶだけ。

広報部は「数字が伸びてる」と自信たっぷりに胸を張り説明するが、
営業部からは「問い合わせにつながっていない」と苦情だけが届く。

「評価指標のハリボテ」に騙されてはいけない。
“数値遊び”は趣味でやれ。ビジネスは売上を作ってナンボだ。

3.クリエイティブ至上主義に陥っている

「おしゃれなホームページ」「かっこいい動画」「カワイイ投稿」──
その仕上がりにうっとりしている時間があれば、自問しろ。

誰に向けて作ったのか?何を伝えたかったのか?──
その答えがあいまいなら、それは“自己満足アート”でしかない。

自己陶酔のプロモーションは、一銭にもならない。
成果を生まないクリエイティブは、ただのコスト。
アートとビジネスを混同してはいけない。

広報出身者のよくある3つの失敗──そして、誰も買わなかった

1.「フォロワーを増やせば売れる」と本気で信じている

SNSの「フォロワー数」「チャンネル登録者数」「いいね数」だけを追いかけ、
会議室のホワイトボードには“増加傾向”のグラフが並ぶ。

そして、報告書には「順調です」の一言──だが、現場の営業は誰も笑っていない。
営業チームに届いた見込客リストはゼロ。アポもゼロ。商談や契約の数も当然ゼロ。

これは、観客動員数だけを増やして、
試合に負け続けているプロ野球チームと同じだ。
売上に結びつかない数字は、いくら増やしても意味がない。

マーケティングとは、売れる仕組みをつくる仕事だ。
「見られた数」ではなく、「買われた数」で評価せよ。

2.「誰が見込み客なのか」がわかっていない

ターゲットが未定義。広告動画には顧客の「課題」や「悩み」、
はたまた、「業界」「企業規模」「役職」も一切登場しない。

その上、
本来届けるべき相手は、顧客の技術部門なのに、
SNSで発信している内容は、
「働く社員のランチ風景」や「社内レクリエーション大会の様子」。

それを誰が見て、何を買うのか?
「届ける相手」が見えていない発信では、顧客は誰も動かない。

本人ですら、自分がどの顧客のためにSNSで投稿しているのかを説明できない。
それでは、マーケティング担当者として失格だ。

3.“自己満足CM”を作ってしまう

動画は確かに美しい。編集もプロっぽい。音楽もセンスがいい──

だが中身がない。
製品・サービスの強みも、導入実績も、課題解決能力の証拠も、
広告内で一切語られていない。

「再生数は1万回超えました!」と誇るが、
問い合わせはゼロ。商談もゼロ。売上もゼロ。
話題になっただけの広告は、ただの“高価な自己紹介”にすぎない。
社内ウケ・世間ウケよりも、顧客の購買意欲を高める広告を作れ。

参考:
ADEKAの事例から学べ!半導体企業が作ってはならないCMとは?

必要なのは、“広報”ではない──“マーケター”である

今、半導体企業に本当に必要なのは、
「顧客がWeb上のどこで興味を持ち、どこで離れてしまうのか」を
しっかりと見抜ける人材である。

たとえば──

・ホームページを見に来た人が、どのページで止まり、どのタイミングで離れたか?
・資料請求や問い合わせのボタンを押さなかったのはなぜか?
・どんな言葉や動画・画像なら、見込み客の心に刺さるのか?

こうした「顧客の行動」をよく観察しながら、
「次はこうすれば反応がよくなるはずだ」と仮説を立て試していく。

そして、実際にいくつかのやり方を試して、
どのやり方が最も反応がよかったかを比較する──
これが、結果を出すための基本姿勢だ。

一度うまくいったやり方を再現できるようにして、
見込み客を“毎月安定して集められる仕組み”をつくれる人間──
それが、今の半導体企業に必要なマーケティング人材である。

忘れるな。
広報とは、世間の“好感度”をコントロールする仕事である。
わかりやすく言えば、メディアを使った社会の印象操作だ。

だが、マーケティングは、“売上”という現実を動かす仕事だ。
目的も、指標も、スキルもまるで違う。混同してはいけない。

もちろん、
会社の規模が大きくなればなるほど、
広報のスキルが役立つ場面もでてくる。

だが、それはあくまで、マーケティングの“補助装備”にすぎない。
笑えるCMを作り、印象を整えて、キラキラ投稿を続けても──
数字は動かない。商談も増えない。会社は変わらない。

半導体企業が本当に重宝すべきは、
「飾る人間=広報」ではなく、「動かす人間=マーケター」である。

数字に責任を持ち、戦略を設計し、現場を動かし、売上という“結果”で語れる──
それが、真のビジネスパーソンであり、優れた“マーケター”である。