「ウチには強みなんてないんです…」
──もしあなたがそう思っているのなら、最初に断言しておく。
それは単なる“思い込み”だ。
いや、もっと正確に言おう。それは──幻想でしかない。
あなたの会社には、確実に強みが存在する。
ただ、それがまだ“言葉”になっていないだけ。
自分たちでは当たり前すぎて、気づけていないだけだ。
なぜ、ここまで断言できるのか?
それは、私がこれまで100社以上の中小半導体企業の
ホームページや販促資料を見てきた中で、
「本当に強みがない企業」など、ひとつも存在しなかったからである。
むしろ、強みに無自覚な企業ほど、伸びしろと可能性を秘めている。
あなたの会社も、そのひとつかもしれない。
目次
「強みがない」は幻想だ。差別化のカギは、社内に眠っている
たとえ、あなたの会社が「技術力では他社に劣る」と感じていたとしても、
それが“売れない理由”になるとは限らない。
なぜなら──
強みとは、「性能」や「スペック」の高さで決まるものではないからだ。
では、本当の強みとは何か?それは──
・「誰に」
・「どんな状況・用途・タイミングで求められているか」
・「どんなニーズに応えているか」
というポジショニングの話である。
たとえば、以下のようなものも、れっきとした「強み」だ。
✔ 加工精度が劣っていても、「低コストで大量供給できる」のなら、それが武器になる
✔ 有名企業と取引がなくても、「ニッチ用途でシェアを独占」していれば、それが差別化になる
✔ 知名度がゼロでも、「特定市場で10年以上使われ続けている」のなら、それは信頼の証明である
にもかかわらず、多くの中小半導体企業は、
いまだに“スペック主義”という幻想にとらわれている。
そのせいで、本来なら勝てるはずの市場ですら埋もれてしまっているのだ。
こうして、中小半導体企業の営業社員たちは、
自ら目を閉じ、言い訳の世界へと沈んでいく。
「ウチは技術が弱いから…」
「どうせ大手には勝てないよ」
「結局、最後は価格なんだよね…」
──だが、それはすべて言い訳である。
現実を直視せず、自分たちを納得させるための自己暗示にすぎない。
そんな呪縛は、今すぐ断ち切れ。
そこから抜け出さなければ、あなたの会社はいつまでも埋もれたままだ。
強みの言語化ができなければ、価格競争という“死の海”に沈む
今、製造業の営業現場では──
「強みを言語化できていない企業」が、静かに、だが確実に市場から脱落しつつある。
理由は極めてシンプルだ。
見込客は、“わかりやすい会社”にしか時間を使わない。
どれだけ高度な技術を持っていようが、
どれほど納品実績を積み重ねていようが──
それを“ひとことで伝えられない”なら、存在していないのと同じである。
こうした「伝えられない会社」が、営業現場ではどんな発言をしているか?
おそらく、あなたの会社でも、こんな言葉が日常的に飛び交っているはずだ。
・「特に変わったことはしていません」
・「まあ、技術は普通ですね」
・「ウチは大手と比べたら…」
──これらはすべて、“謙虚”という名を借りた思考停止の言葉だ。
そして、何より恐ろしいのは──
その“思考停止”が、あなたの会社の未来を奪うということ。
覚えておいてほしい。
顧客は「技術力がある会社」から買うのではない。
“技術力を、誰にでもわかる言葉で語れる会社”から買うのだ。
中小半導体企業でも“強みに気づいた瞬間”に進化できる
これから紹介するのは、すべて仮想の事例である。
だが、これまで数多くの中小企業や個人事業主と向き合ってきた経験から断言しよう。
──こうした「強みに気づかず、自ら過小評価しているケース」は、現実でも驚くほど多い。
つまり、あなたの会社でも、同じように“強みに気づく瞬間”が確実に存在する
ということだ。要は気づいていないだけ。掘り起こしていないだけなのだ。
ケース1:ウエハーの研磨パッドを製造している企業
「耐久性も加工効率も、正直、他社より数段は劣ってる。
最先端には使われていないし、売上も低い……強みなどない」
──そう“思い込んでいた”装置部品メーカーがあった。
しかし、実際に確認してみると──
“成熟した装置市場”ではシェアNo.1。
どういうことか?
たしかに、2nmや5nmといった最先端半導体を作るTSMCやIntelには、
まったく相手にされない。
だが一方で──
40nmや65nmといった“レガシー技術”で量産を続けている企業たちからは、
「性能は“そこそこ”でいい。とにかく安くて、何度でも買えることが最優先だ」
というニーズが明確に存在していた。
つまり、この企業はすでに唯一無二の存在だったのだ。
“枯れた技術”を使う市場において、選ばれ続ける理由があった。
それなのに本人たちは、
「先端技術を持っていない=強みがない」と、完全に錯覚していた。
強みは、見つけようとしなければ見つけられない。
この事例は、その象徴である。
ケース2:半導体製造装置向けの継手メーカー
「ウチなんて、業界全体で見たら完全に下のほうですよ……」
──そう謙遜していた製造装置向けの継手メーカーがあった。
たしかに、半導体業界全体で見れば、トップ10にも入っていない。
シェアもごくわずかで、業界内での存在感は決して大きくなかった。
だが──
話の視点をひとつ、ズラしてみた。
「洗浄用薬品に耐えられる継手」に絞って考えると、どうか?
そこに隠れていたのは、国内トップの実績だった。
他社が見過ごしているニッチな工程において、
この企業は確実に選ばれている存在だったのだ。
この事例が教えてくれるのは、ただひとつ。
「市場の見え方は、“定義の仕方”で180度変わる」
中小半導体企業が“全体市場”で埋もれるのは当然だ。
だが、“工程別”、“用途別”、“工程×顧客層”といった粒度で切ってみれば、
あなただけが勝てているエリアは、確実に存在する。
ケース3:ドライエッチング工程で使われるガスの販売会社
この会社は創業以来、徹底して年商50億円未満の中小半導体企業を顧客にしていた。
そして、自分たちでもこう思い込んでいた。
「ウチは大手と取引がない。それが弱みだ──」
だが、取引実績を丁寧に棚卸ししてみたところ、意外な事実が明らかになる。
なんと、年間52社もの中小半導体企業と、継続的な取引を続けていたのだ。
これは、日本国内でも有数の“取引社数”である。
1社あたりの売上こそ小さいが、「取引数」で見れば業界トップクラス。
つまりこの会社は、“数”で信頼を勝ち取るモデルを築いていたのだ。
彼らの営業戦略は、広く・薄く・長く──
「分散された信頼の積み重ね」で勝負するスタイルだった。
「大手と付き合いがない=弱い」ではない。
むしろそれは、“数で勝つ市場”における絶対的な優位性だったのだ。
これらの事例はすべて、現場でよく見かける
“強みに気づかずにいる企業の典型例”である。
そして、あなたの会社にも、同じような「見過ごされた強み」が
眠っている可能性は極めて高い。
まずは視点を変えること。
市場を再定義し、当たり前だと思っていたものを深掘りすること。
それこそが、競合と差別化し、自社の強みを言語化するための第一歩である。
今すぐ3時間を投資せよ。
それが、価格ではなく“価値”で売るための第一歩だ
あなたの会社の強みを見つけるのに、
何十万も払ってコンサルタントを雇う必要はない。
必要なのは、たった3時間の“社内対話”だけである。
以下のような問いを、営業・開発・製造・総務にまで投げかけろ。
・「ウチにしかない実績って、何かあるか?」
・「お客様からよく言われる“あの言葉”は何だ?」
・「売れている理由って、本当に“技術力”か?」
・「他社が嫌がる仕事、ウチが引き受けてないか?」
・「特定のフェーズ・工程・業種の受注に偏ってないか?」
──たったこれだけの対話で、
いままで“空気のように扱われてきた強み”が、言葉として浮かび上がってくる。
そしてその瞬間から、あなたの会社は変わる。
競合との違いが、はっきりと見えるようになる。
あなたの会社が選ばれる理由が、明文化されていく。
価格ではなく、“価値”で売れるようになる。
だからこそ、今すぐ3時間を確保せよ。
それが、あなたの会社が“市場で勝てる企業”へと進化するための第一歩になる。