マーケティングの“プロ”を雇った?──それ、会社を壊す「爆弾」かもしれない。

もしあなたが、
「競合企業から優秀なマーケティング人材を採用すれば、売上が伸びる」
と信じているのなら──その幻想は今すぐ捨てろ。

特に、その“プロ”とやらが大企業出身者である場合、事態はさらに深刻だ。
なぜなら、中小企業にとって彼らは“救世主”ではなく、
むしろ会社を内側から吹き飛ばす“時限爆弾”だからである。

彼らがあなたの会社に持ち込むのは、「売上を生む仕組み」ではない。
あるのは、潤沢な予算を前提にした“見せかけの戦略”だけだ。
その戦略は華やかに見えるが、中小企業には一切役に立たない。

そして最も恐ろしいのは──
採用後、彼らが仕事をすればするほど、あなたの会社が本来必要とする
「売上直結のマーケティング」から遠ざかっていくことだ。

代わりに始まるのは、社内総出での“マーケティングごっこ”。
売上につながらない虚しい活動に、貴重な時間・人材・資金が吸い取られていく。

──そう、大企業出身のマーケティング担当者は、中小企業の成長を加速させる
エンジンではなく、静かにカウントダウンを続ける“時限爆弾”のような存在なのだ。

大企業出身者=マーケティング実力者ではない。
むしろ、中小企業にとって“害”である

あなたの会社にも、こんな人物が面接に現れたことはないだろうか?

「前職では、年間50億の広告予算を運用していました」
「テレビCMやYouTubeチャンネルを手がけていました」
「Xやインスタグラムでバズる投稿を連発してきました」

──まさに華やかな実績のオンパレードだ。
一見すれば、即戦力どころか救世主のように映るかもしれない。

だが、ここにこそ落とし穴がある。
彼らが誇らしげに語る経歴のほとんどは、
潤沢な資金とブランド力に依存した“大企業専用の戦術”にすぎない。

そこには「資金ゼロから売上を作る力」など存在しない。
したがって、あなたの会社の業績に直結する能力を保証するものでは、断じてないのだ。

つまり、彼らが積み上げてきたものは、
あなたの会社の売上に貢献する実績ではなく、
ただ自分の履歴書を飾るためだけの「見栄えの成果」にすぎない。

そこには、顧客に製品や技術の価値を理解させ、購買という行動に結びつける──
マーケティングの本質は一切存在しないのだ。

彼らがやっていたのは「予算ゲーム」であり、“バズ芸人”の仕事である

彼らが実際にやってきたことは「予算ゲーム」であり、
端的に言えば“バズ芸人”の仕事にすぎない。

なぜなら、大企業におけるマーケティングの中心は
「認知度アップ」と「好感度アップ」──この二つだけだからだ。

✔︎ 彼らは100億、200億という巨額の予算を平然と投下する
✔︎ 視聴者が笑い、感動し、SNSで話題になることだけを狙ったCMを作る
✔︎ 有名タレントを起用して「感じのいい会社」に見せかける
✔︎ CMが話題になったら、マスコミに担当職員を取材させ、マーケティングを語らせる

──こうした施策は一見すると華やかに見える。
だが実態は「株主や世間体」を満足させるための“パフォーマンス”にすぎない。
顧客に行動を促し、売上に結びつける仕組みは、そこには一切存在しないのである。

顧客を動かす力、売上を生み出す力がない以上、
彼らが誇らしげに“マーケティング”と呼んでいるものの正体は、
結局のところ、時間と金にモノを言わせただけの消耗戦に過ぎない。

そして、この戦い方が成立するのは、
潤沢な資金とブランド力を武器にした大企業だからこそだ。

中小企業には、そんな余裕など一切ない。
同じ戦法を真似すれば、資金も人材も体力も瞬く間に食いつぶされ、
最後には立ち上がる力すら奪われる。
持久戦に足を踏み入れた瞬間、あなたの会社は間違いなく敗北するのだ。

売る責任を負ってこなかった人間に、売上は作れない

大企業出身者の多くは、
「視聴者が笑ってくれた」「ネットでバズった」──
その瞬間に満足してしまう。

売上?利益?問い合わせ数?
そんなもの、彼らは一度たりとも真剣に考えたことはない。

恐ろしいのは、その無関心が社員レベルにとどまらないことだ。
課長、部長、さらには上場企業の経営陣に至るまで、
広告にいくら費やしたのか、その広告からいくらの売上が発生したのかを、
誰ひとり正確に把握していないのである。

では、そんな彼らを中小企業に迎え入れてしまうとどうなるか?

✔︎ 朝から晩まで、“分かったようなこと”を披露し合う「マーケティング会議」
✔︎ 全く売れていないのに「カッコいいプレゼン資料」を同僚同士で褒め合う
✔︎ 問い合わせ数がゼロにも関わらず、SNSで話題になったことに酔いしれる

──そう、始まるのは「マーケティングごっこ」にすぎない。
しかも、そのごっこ遊びに会社の資源が吸い込まれていく。

そして気づいた時には、
「マーケ人材を雇ったはずなのに、売上は下がっている」という
悪夢が現実となっているのだ。

ミネベアミツミとADEKAの失敗が、そのことを証明している

私は以前、ブログ記事(The・半導体マーケティング)の中で、
半導体大手ミネベアミツミ(株)と素材メーカー(株)ADEKA
制作したテレビCMの問題点について取り上げたことがある。

関連記事1:ミネベアミツミの失敗CMに学べ──放送前から“失敗確定”だった3つの理由とは?
関連記事2:やってしまったミネベアミツミ──ターゲットなき広告が生み出す悲劇とは?
関連記事3:ADEKAの過ちから学べ!半導体企業が作ってはならないCMとは?

両社に共通しているのは、ただ一つ。

マーケティングを1ミリも理解していない。売る気もまったくない。
しかも、売れない広告に会社の莫大な広告費を投じることに、何の疑問も抱かない──
それが彼らの正体だ。

✔︎ CM内で顧客に資料請求や問い合わせを促していない
✔︎ そのため、このCMから発生した問い合わせ数を測定できない
✔︎ 問い合わせ数が分からなければ、CMの成功・失敗を判断できない
✔︎ 成否判断ができなければ、改善策や次の計画が立てられない
✔︎ 唯一わかるのは、石川佳純や生田絵梨花に対するSNS上の「カワイイ」の数だけ

──これでどうして「マーケティングをやっている」と言えるだろうか。
もはや、売上につながる仕組みなど何ひとつ存在しない。

では、そんな無意味なCMを、なぜ彼らは作るのか?
答えはシンプルだ──社会での「ウケ狙い」である。
「感じのイイ会社ですね~」と世間に思わせたい。ただそれだけが目的なのだ。

しかも、広告に携わった社員たちは、
世間の評価を自分の手柄にすり替える。

『このCMは俺(私)の仕事だ』と周囲に言いふらし、
売上には一切関心を持たず、
ただ承認欲求を満たすための“美術作品”を作る度に悦に浸る。

もし、あなたの会社がそんなCMを作ったらどうなるだろうか?
もし売上を考えない人間が社内に入り込み、同じ発想で広告を作り始めたら──
その瞬間、あなたの会社は倒産まっしぐらである。

売るためのマーケティングができる人材だけを採用せよ

中小半導体企業にとって、マーケティングとは「笑いを取ること」ではない。
「話題になること」でもない。

必要なのは──
認知させた上で、顧客に行動させ、売上に結びつけること。

それ以外は一切不要だ。
だからこそ、マーケティングとは売上を生み出すための“仕組み”でなければならない。

✔︎ 売ることだけを目的とした広告を繰り返し打つ
✔︎ 視聴者の「笑い」や「感動」といった、売上無関係な反応はすべて切り捨てる
✔︎ SNS上の「いいね」「チャンネル登録者数」といった虚飾は一切無視する
✔︎ 結果を数字で分析し、改善を重ね、また売るための広告を作る

──この一連の“泥臭い仕事”ができる人間だけが、
中小半導体企業にとって本当に必要なマーケティング人材である。

では、その資質をどう見抜けばいいのか。
答えはシンプルだ──それは、採用面接で突きつける質問にある。

✔︎「競合が値下げを打ち出した。あなたならどんな広告を作るのか?」
✔︎「その成果とやらは、いくらの広告費を投じて達成したものなのか?」
✔︎「あなたは、SNSの『いいね』の数を無視すべき理由を知っているか?」

これらの質問にまともに答えられない人間を──絶対に採用してはならない。

求職者の肩書きも経歴も会社を救ってはくれない。
あなたの会社を生かすも殺すも、
経営者であるあなたの決断ひとつにかかっているのだ。

マーケで数字を作れる人材を選び抜け。
それこそが、中小半導体企業が淘汰の波を生き残り、
市場で勝ち続けるための唯一の道である。