もしあなたが──
「営業が顧客に媚びるなんてカッコ悪い」
「ウチは技術で勝負しているから、お世辞なんて必要ない」
「ゴマスリしなくても、誠意ある対応で契約は取れる」

──そう考えているのなら、その固定観念は今すぐ捨て去れ。
なぜなら、「お世辞」は顧客を動かす最強の営業スキルだからだ。

これは、相手に媚びへつらって
自分を安売りしろと言っているのではない。

お世辞とは「相手を持ち上げるための言葉」ではなく、
相手に“自分の価値を再認識させるための言葉”である。
つまり、顧客の自尊心を刺激し、こちらの提案に耳を傾けさせる“戦略的ツール”なのだ。

あなたの会社の製品がどれだけ優れていようと──
お世辞ひとつ言えない営業の話など、誰も聞かない。

スペックや資料を淡々と説明するよりも、
「この人は信頼できる」「感じがいい」と思ってもらう方が、
顧客の意思決定を引き出す可能性は圧倒的に高くなる。

結局、ビジネスの意思決定を下すのはロジックではなく、人の感情だ。
そしてその感情は、“この営業社員を好きかどうか”で大きく左右される。
ならば──まず好かれよ。ここからすべてが始まる。

心理学的研究により、「お世辞=説得力アップ」が実証された

実は、
「お世辞が購買意欲を高める」ということは、
心理学の世界で科学的に証明されている事実だ。

香港大学科学技術学部のエレイン・チャンと、ジャディブ・セングプタは、
「たとえ相手がお世辞だと理解していても、そのお世辞は説得力を高める」
という衝撃的な研究結果を発表している。

彼らによれば、人はお世辞に対して防御的になるどころか、
むしろ好意的な印象を抱きやすく、しかもその印象は長く記憶に残るという。

つまり──
✔︎ 営業が顧客を褒める
✔︎ 顧客はいい気持ちになり、「この人は私を理解してくれている」と感じる
✔︎ その状態で製品説明を受けると、「この提案なら信頼できる」と受け入れやすくなる

この一連の流れに、理屈で押し切るような営業トークは一切ない。
ポイントはただひとつ──顧客に好かれること。

顧客は「論理」ではなく、「好感」で心を開く。だからこそ──
営業にスペックを語らせる前に、まず顧客の感情をつかませろ。

顧客の自尊心を刺激する“お世辞トーク”を営業に導入せよ

誤解してはならない。
“お世辞を言え”とは言っても、「嘘をつけ」と言っているのではない。

お世辞とは、あくまで「相手が誇りに思っている点」を見抜き、
それを的確に言葉にして伝えるということだ。
目的はただ1つ──相手のプライドをくすぐること。

たとえば──
「◯◯様の仕様書、本当に緻密ですね。御社の設計思想はすごく参考になります」
「今回のご判断、さすがです。他社なら数日かかるところを即断即決…脱帽です」
「このレベルの精度でやられてる会社、他に見たことないです」

このような“お世辞トーク”には、いくつかの共通パターンがある。

✔︎ 嘘は言わない
✔︎ 相手の判断・能力・姿勢を褒める
✔︎ 相手の感情が動きやすい場面で言う(初訪問・決裁直前・クロージングなど)

これを営業のルーティンにするだけで、トークの“刺さり方”がまるで変わる。

無骨なトークでは、もう誰の心にも届かない。
相手の心を揺さぶらずして、製品の魅力を伝えることなど不可能だからだ。

顧客は常に、「自分を理解してくれる営業」を求めている。
だからこそ──
“共感”と“称賛”を武器にできる営業こそが、信頼と受注を手に入れる。

顧客に頭を下げる必要はない──だが、お世辞は必要だ

今の時代、技術だけでは売れない。
どれだけ優れた製品でも、資料を送るだけでは誰も見向きもしない。

顧客が「この人から買いたい」と思わなければ、商談は始まる前に終わる。
そして、顧客との距離を一気に縮める最も簡単な方法が「お世辞」なのだ。

誤解してはならない。これは決して、へりくだって媚びを売れという話ではない。
「お世辞」とは、顧客の感情を動かし、信頼を引き出す“攻めの武器”なのである。

営業に必要なのは、頭を下げることではない。
必要なのは、顧客のプライドを自然にくすぐり、
「この人はわかっている」と思わせる技術だ。

そしてそれは、今すぐにでも身につけさせるべき“営業スキル”でもある。

「あなたは最高です」
「あなたが一番です」
「あなたは賢者です」

──そんな一言を、狙いすましたタイミングで届けられる営業こそ、最後に勝つのだ。
そしてその言葉を“戦略として”使いこなせる者だけが、顧客の心をつかみ、商談を制する。

売れない原因を、製品や技術力のせいにしてはいけない。
本当に見直すべきなのは、営業の「言葉の使い方」だ。

今すぐ、すべての営業社員にお世辞の技術を習得させよ。
そして、社長であるあなた自身も、その研修に参加せよ。

それこそが──
あなたの会社が、競争の激しい半導体市場で生き残り、
勝ち続けるための、唯一のマーケティング戦略である。