もしあなたが──

「広告代理店の選定は部下に任せてる」
「展示会?営業チームが自由にやってるよ」
「SNS?若い女性社員が頑張ってるみたい」

──そう考えているのなら、あなたはすでに会社の財布を部下に預けてしまっている。
しかもその相手は、一度も“お金の痛み”を味わったことのない、お気楽な人間たちだ。

そしてその財布からは、
毎月、静かに、しかし確実に数十万──時には数百万が流れ出ている。
しかもその多くが、“売上にまったく結びつかない自己満足プロジェクト”に消えていく。

✔︎ 展示会で動画を流し「目立ちたい」
✔︎ 広告を作って「有名人と話したい」
✔︎ SNSでバズらせて「友達に自慢したい」

──その動機の先にあるのは、売上でも成果でもない。
あるのは、社内での評価アップや「やった感」だけだ。

なぜこれほどまでに、無駄遣いが横行してしまうのか?
理由は明白だ。

管理職や社員は、会社の金を使うことに“痛み”を感じていない。
そのため、そこに責任も、成果への意識も、まるで存在しない。
だからこそ、会社の金を本気で守れる人間は──社長、あなただけなのだ。

社長がこの事実から目を逸らした瞬間、
会社は、部下の承認欲求を満たすためだけに金を吐き出し続ける
“無制限のATM装置”と化す。

忘れるな。
半導体企業の社長が、絶対に他人に任せてはならない仕事は2つある。
1つは「マーケティング」。もう1つは──「決済」だ。

決済を部下に任せる会社は、必ず崩壊する

決済を「現場の判断に任せている」──そう語る社長は意外にも多い。
だが、それは運転免許を持たない新入社員に、社用車の鍵を渡すようなものだ。

アクセルの重みも知らず、ブレーキの位置も曖昧なまま。
それでも彼らは、「やります!」と笑顔でアクセルを全開にする。
──そして、一直線にコンクリートの壁へ突っ込む。

✔ 展示会出展150万円──「みんな俺たちの技術に驚いてました」の一言で終了
✔ SNS広告100万円──その広告からいくらの売上が出たのか、誰も説明できない
✔ 動画制作80万円──YouTubeでの再生数500回。「動画を制作したこと」に満足

こうした支出に共通するのは、
“お金の重み”を知らない人間に決済を委ねているという構造である。

彼らにとって、会社の金は「結果を測るもの」ではなく、
好きなことに使える“自由予算”でしかない。

だが、社長にとって、会社の金は「血液」だ。
失えば体力が落ちる。流しすぎれば、組織の先端から麻痺が始まる。

この視点の差こそが、会社を内側から腐らせる“本当の毒”なのだ。
経営とは、「金の痛み」を理解する者だけに許された──特権であり、義務である。

社員に“自腹感覚”はない。だから、浪費が止まらない。

社員が動画を作りたがる──理由は「動画制作に憧れがあるから」。
SNS投稿をやりたがる──理由は「目立つと友達に自慢できるから」。
広告を作りたがる──理由は「有名人と会えるかもしれないから」。

当然、そこに「売上につながるか?」という視点は一切ない。
彼らの頭の中には、“ビジネス”という言葉が存在していないのだ。

たとえばミネベアミツミ。彼らが制作したCMはこうだ──

「青春をごっそり楽しめる」
「世界をこっそり、ごっそり変えていく」
「ミネベアミツミ!」──元卓球日本代表の石川佳純が笑顔で連呼。

参考URL1:https://www.youtube.com/watch?v=HI9McN3F3VA
参考URL2:https://www.youtube.com/watch?v=WNW02DdEOhc

──これはもう、広告ではない。詩(ポエム)である。

製品名すら出てこない。誰のどんな課題を解決するのかも示されない。
視聴者を資料請求や問い合わせ、自社求人応募に促してもいない。
つまり──「売上につながる構造」が、最初から設計されていない。

ADEKAのCMも同様だ。
可愛い子役(元乃木坂46の生田絵梨花)、ゆるい音楽、エモい演出。

参考URL:https://www.youtube.com/watch?v=mWdl62YhWFg

だが、このCMを見た調達部長や決裁権者たちは、きっとこう思ったはずだ。
「地味だけど、すごい?…で、それが俺たちの業務にどう関係あるの?」
──そう思われた時点で、その広告は終わっている。

それでも、“見栄えのいい作品”は関係者を満足させる。
広告代理店はガッツポーズ。
社員たちは「すごいもの作れた」とドヤ顔。
だが現実には──売上は1円も増えていない。

それでも、あなたは部下を「信じる」のか?
それでも、あなたは部下に「任せる」のか?

関連記事:ミネベアミツミの失敗CMに学べ──放送前から“失敗確定”だった3つの理由とは?
関連記事:ADEKAの過ちから学べ!半導体企業が作ってはならないCMとは?

金の使い道は「経営判断」だ。社長の仕事である。

勘違いしてはならない。
「社長が決済を握る」というのは、「現場を信用するな」という意味ではない。
「金の使い方だけは、社長が責任を持って判断せよ」──それだけの話だ。

なぜなら、金を使うという行為は、単に「経費を処理する」ことではない。
それはすなわち、

✔️ 市場にどう打って出るかという“攻め”の判断
✔️ 顧客に何を伝えるかという“伝達”の設計
✔️ 自社の限られた経営資源を、どこに集中させるかという“選択”の責任

──つまり、それは「経営の本質」そのものなのである。

この“経営の心臓部”を社員に丸投げするという行為。
それはすなわち、「経営の意思決定を他人に譲っている」のと同じである。

「現場の判断を尊重してます」──
などという聞こえのいい言い訳で、
社長としての役割から逃げてはならない。

財布を誰が握るのか?
そこに、経営者としての覚悟がにじみ出る。

財布は、社長が握れ。
それができない人間に、経営を語る資格はない。

部下から財布を取り戻せ。部下の無駄遣いを止めろ。

あなたは、
「どの目的に、いくらの費用をかけるか」
という判断を、現場任せにしていないか?

もしそうなら──
その瞬間、あなたは
「社員の自己満足欲求に応えるだけの、無自覚な資金提供者」になってしまう。

広告代理店に言いくるめられ、SNS業者にはおだてられ、
“売上につながらない活動”に、毎月、数百万円が消えていく。

それでもなお──
あなたは、金の使い道を部下に任せ続けるのか?
歯止めをかけられるのは、社長であるあなただけだ。

✔ この広告は、本当に「売れる構造」になっているか?
✔ 展示会は、「商談化率」を意識して設計されているか?
✔ 決済前に、「誰が、何の目的で、いくら使うのか」を社長自身が確認しているか?

──この3つを、今すぐ自問せよ。

そして、会社の財布を社長の手に取り戻せ。
会社の金は、単なる「予算」ではない。
それは──社長の思想であり、意思であり、経営そのものだ。

それを握らずして、何が経営か。
金を守れ。意思を示せ。判断せよ。
それこそが、経営者にしか担えない役割なのだ。

最後に、はっきりと言う。

“自腹感覚”のない部下に、決済を任せてはならない。
金を払うことの“痛み”を知っている者だけが、
会社におけるすべての決済判断を担うべきである。

それこそが──
競争の激しい市場で、勝ち続けている企業が徹底している
唯一無二のマーケティング戦略なのである。