もしあなたが──
「社内に眠るシナジーを引き出すのが経営者の仕事だ」
「事業間の連携でコストを削減すべきだ」
「グループ企業の技術を組み合わせれば、売上は必ず伸びる」

──そう考えているのなら、今すぐその幻想を捨てよ。
それは、あなたの会社を確実に破滅へと導く“戦略ミス”である。

結論から言おう。
グループ企業との協業は、赤字の元凶である。
そもそも、事業間のシナジーなど存在しない。

たしかに、関連会社や部門同士の連携は──表面的には美しく見える。
成果が少しでも出れば、社内では称賛され、
経営者であるあなたも「うまくまとめた」と評価されるだろう。

メディアからは取材され、社会的な信用も得られる。
いわば、“社長の人間力”が持ち上げられ、
自分が優れた経営者であるかのような錯覚に陥りやすい局面だ。

だが──あなたは本当に気づいているだろうか?
「連携すれば効率が上がる」という前提そのものが、幻想に過ぎないことに。

なぜなら──
シナジーを実現するために費やされたコストが、
それによって得られた売上を大きく上回っている──
そんな事例が、いまも後を絶たないのだ。

グループ内提携を“第一に考える”時点で、あなたは負けている

なぜ、シナジー効果を狙った経営は、必ず失敗するのか?

「うちには〇〇事業部がある。そことうまくやればいい」
「兄弟会社の△△技術を使えば、開発費が浮く」
「××事業部は創業時の看板部署だ。閉鎖にならないよう仕事を回そう」

──どこにでもある話だ。だが、これこそが最も危険な発想である。

なぜなら、自社事業部やグループ企業との“提携ありき”で戦略を組むことは、
市場の競争から目を背け、経営判断を社内事情に左右されている証だからだ。

最適な提携先が、本当に社内にあると信じているのなら、
あなたは現実が見えていない。そして、経営者としても未熟だ。

国内の半導体企業、BtoB、BtoC企業──
いや、ほぼすべての企業にとって、
真に提携すべき相手は、外部企業である。

実際、大企業の事業部やグループ会社の多くは、
本社から切り離した方が、圧倒的に強くなる。

本社の経営陣が100を超える事業部すべてを把握し、
正確な判断を下すなど、現実的に不可能であるからだ。

事業部やグループ企業にとっても、
本社との資本関係が断たれた瞬間から、“守られた存在”ではなくなり──
自らの力でマーケティングを行い、コストを削り、成長を勝ち取らねばならなくなる。

結果として、本社も、スピンアウトされた側も、
互いに自立し、より健全な成長構造が生まれるのだ。

にもかかわらず──
経営陣はいまだに「競争力が落ちるかもしれない」と怯え、
「分離」ではなく「シナジー」で現状維持を図ろうとする。

だが、その選択がもたらす結果は、すでに多くの企業が証明している。
ほとんどの場合、シナジーを実現するためにかかったコストは、
シナジーによって生まれた売上を遥かに上回っている。

それでもなお──
あなたは、「身内との連携」という、
最も手軽で、最も危険な経営判断を続けるつもりなのか?

迷ったら“スピンアウト”だ──まずは、社内から追い出せ

では、どうすれば、この“シナジー地獄”の悪循環から抜け出せるのか?

答えはシンプルだ。
いま提携を考えている事業部やグループ企業があるのなら、
まずはスピンアウトさせよ。

つまり、「協業したほうがいい」と感じているその相手を、
一度、完全に“社外”へ放り出すのだ。

なぜか?

スピンアウトすれば、その事業はもはや“身内”ではなくなる。
忖度も、情も、過去のしがらみも意味をなさない。
一企業として、その実力だけが評価対象になる。

社内の力関係も、社長同士の友情も、もはや関係ない。
そこで問われるのは──スピンアウトしたその相手が、
本当に“連携するに値する存在かどうか”、それだけだ。

以上を踏まえたうえで──いま一度、自分に問いかけてみてほしい。
「その会社が社外の企業であっても、迷わず提携を選ぶだろうか?」と。

「Yes」と即答できるなら、その企業には価値がある。
そのときは、対等なパートナーとして堂々と連携すればいい。

だが、「No」なら──それがすべての答えだ。
最初から提携すべき相手ではなかった、ということである。

身内との提携を前提にした戦略は、必ず失敗する

これだけは忘れてはならない。
自社の事業部やグループ企業との“協業ありき”で戦略を立ててはならない。

「身内と連携すれば効率的だろう」「シナジーが生まれるはずだ」──
そんな思い込みこそが、経営判断を狂わせる最大の要因なのだ。

あなたの会社がこれからも勝ち続けるために必要なのは、
「できるだけ身内と仕事をしたい」という甘えを完全に捨て去ることである。
身内の能力も、外部企業の能力も、フラットに、そして徹底的に評価せよ。

まずは、あなた自身がその姿勢を行動で示すべきだ。
いま提携を前提に考えている事業部やグループ企業があるのなら、
ためらうことなく、スピンアウトさせよ。

そのうえで、自らにこう問いかけてほしい。
「それでもなお、その相手と手を組むべきなのか?」と。

最後に、はっきりと言おう。
シナジー効果を前提にした戦略は、今すぐ捨て去るべきだ。
“身内ありき”の経営判断も、今日限りで終わらせろ。


それは──
「身内とだけ仕事をしたい」と考える、
結果を出せない凡庸な経営者が陥る思考だ。

そうした会社からは、優秀な社員が真っ先に去っていく。
残るのは、忖度と根回しに長けた者たちによる、形ばかりの組織でしかない。

あなたの会社は、内輪の論理を守るためにあるのではない。
市場で戦い、そして勝ち続けるために存在しているのだ。

だからこそ、見極めてほしい。
その提携は、「身内だから」という安易な理由に基づくものか?
それとも、事業に勝利をもたらすための、最善の選択肢なのか?

この問いにどう答えるか──
それこそが、競争の激しい半導体市場で、あなたの会社が生き残り、
そして勝ち続けるために必要な、経営者としての姿勢である。