もしあなたが──
「人は褒められてこそ成長する。だから、俺は社員を褒めることを意識している」
「怒鳴っても部下は動かない。だから、俺は人間力を高めるセミナーに通っている」
「Z世代は俺たちとは違う。彼らにはソフトな言い方と、実現可能な目標設定が必要だ」

──などと本気で信じているのなら、今すぐ、その幻想を捨てよ。

まず、断言する。
経営者は、部下にプレッシャーを与えなければならない。
プレッシャーなくして、組織の成長はあり得ない。

人は、快適すぎる環境に甘んじている限り、本気で動くことはない。
張りつめた緊張感がなければ、成果につながる仕事など生まれない。

これは感情論でもなければ、精神論でもない。
成果を出してきた経営者だけが知っている、
極めて現実的な「人の動かし方」である。

そして今、あなたがこの場で知っておくべきことがある。

「優しさ」は、経営の規律をゆるめ、売上を蝕む。
「自由」は、やがて組織を混乱させ、社員の質を低下させる。
そして「甘さ」は、社員から自ら動く力を奪い、会社全体を弱体化させる。

この現実を直視できない経営者に──人と組織を率いる資格などない。

社員は“報酬”と“恐怖”でしか動かない

なぜ経営者は、社員を“脅し続けるべき”なのか?
その答えを理解するには──
「人はなぜ働くのか?」という根本的な問いに、正面から向き合う必要がある。

なぜ人は働くのか?
その理由は、突き詰めれば、たった2つしかない。

1.自分が「手に入れたいもの」があるから
2.自分が「失いたくないもの」があるから

この2つ以外に、行動の原動力など存在しない。
それ以外はすべて、美辞麗句か、現実を知らぬ者の理想論だ。

つまるところ、人は「快適な暮らしを維持し、
それを失いたくない」から働いているにすぎない。

──では、ここで考えてほしい。

あなたの会社の社員たちは、
いま何を手に入れたいと思っているのか?
そして、何を失いたくないと感じているのか?

そうした“欲望”と“恐怖”を、行動へ変える仕組みを、
あなたの会社は制度として整えているだろうか?

たとえば──
社員が「これを手に入れたい」と本気で思えるような報酬に対して、
自然と行動が向かうような仕組みが、しっかりと設計されているか?

また、「これだけは絶対に失いたくない」と感じさせるような、
具体的なルールや制裁措置は整備されているか?

そして、それらの制度が単なる“お題目”で終わっていないか?
机上の空論ではなく、日々の業務の中で、
社員の緊張感を生み出す仕組みとして機能しているか?

多くの企業がそうであるように、あなたの会社でも──
給料は毎月、当然のように振り込まれ、
成果を出さなくても生活は守られ、
目標未達でも、誰も責任を取らない。

このような状態で、社員が力を出すと本気で思っているのか?

断言しよう。
社員を動かすのは「報酬」と「恐怖」。

それ以外はすべて──
現場を知らない教育者や評論家がこしらえた、“耳ざわりのいい理想”でしかない。

「脅し」と「報酬」が、仕組みになった飲食店

なぜ、経営者は全社員にプレッシャーをかけなければならないのか?
なぜ、社員は“追い詰められたとき”にこそ、最高のパフォーマンスを発揮するのか?

その答えを示す、ある実話を紹介しよう。

今から20年以上前のこと。
ある多国籍企業のエリート社員が、
スイスの小さなパスタチェーンの買収を検討していた。

現地の店舗を視察した彼は、目を疑った。
小さな店。目立たない立地。にもかかわらず、サービスの質が異常に高い。

厨房も、ホールも、一切の無駄がない。
スタッフ全員が、まるで“自分の店”を守るかのように働いていた。

彼は創業者にこう尋ねた。
「なぜ、ここまで社員の意識が高いのですか?」

創業者の答えは、驚くほどシンプルだった。
「最低賃金か、売上の20%からの歩合。どちらか“高い方”を払う。それだけだ。」
──このたった一行のルールが、社員全員の中で揺るぎない前提条件になっていた。

売上を上げなければ、受け取れるのは最低賃金。
売上を伸ばせば、報酬は大きく跳ね上がる。
つまり、“脅し”と“報酬”の両輪が、制度として完ぺきに組み込まれていたのだ。

結果は、言うまでもない。

✔︎ 接客の質が一変する。客が感動し、リピーターとなり、売上が自然と伸びていく
✔︎ 店内の私語はゼロ。客がいない時間も、売上づくりのために自発的に動いている
✔︎ 「どうすれば給料を上げられるか?」が、スタッフ同士の自然な日常会話になる

つまり──この店には、従業員が“手を抜く理由”が最初から存在しなかったのだ。

社員を動かすのは、“得る期待”ではなく“失う痛み”

あなたが、目標達成に向けて社員を本気で動かしたいのなら、
「報酬」だけを提示しても限界がある。

なぜなら、人は報酬そのものよりも、ある感情に従って行動するからだ。
それは──「失う恐怖」である。

人は、何かを得られるかもしれない期待よりも、
何かを失うかもしれないという不安や危機感に、はるかに強く反応する。

これは、心理学でも証明されている。
人間は「得る喜び」よりも、「失う痛み」によって、
より確実に、そして本気で行動する生き物なのだ。

──この前提に立って、いま一度、あなたの会社を見てほしい。
社員は日々、「何かを失うかもしれない」という緊張感の中で働いているだろうか?

もし、そうした仕組みが存在しないのなら、今すぐにつくるべきだ。
ルールを通じて、社員にプレッシャーを与えろ。
制度の設計によって、社員の逃げ道を完全に塞げ。
それができてこそ、初めて「経営」と呼べる。

たとえば──朝礼で、こう宣言するのだ。

「今月、会社の目標を達成すれば、売上の20%を“全社員で”分け合う。
 だが、達成できなければ──全員、最低賃金だ。
 お前たちに残された選択肢は、この二つしかない。」

声を荒らげる必要はない。感情に訴える必要もない。
静かに、淡々と、目標数字とルールを伝えればいい。

恐怖とは、大声で煽るものではない。
冷静で筋の通った論理で語られたときこそ、人は深く納得し、行動を変える。

組織は「恐怖」で動き、「優しさ」で崩れる

経営において、厳しくも目を背けてはならない現実がある。
それは──「優しさ」では、社員は動かないということだ。

断言しよう。
社員にプレッシャーをかけられない社長に、経営は務まらない。

もちろん、あなたの人としての優しさを否定するつもりはない。
しかし、その優しさは、家庭の中でこそ発揮されるべきものだ。
妻に向けろ。子どもに向けろ。友人に向けろ。

なぜなら、会社という組織は、
そもそも「人間関係を守る場所」ではないからだ。
生き残り、そして勝ち続けるための“戦場”である。

だからこそ、会社という“戦場”では、「みんな仲良く」などという理想論は通用しない。
その幻想を抱いた瞬間、敵(=競合や市場環境)は、容赦なく襲いかかってくる。
そして──集中砲火を浴びたあなたの会社は、こうなる。

・売上が下がる
・優秀な社員から辞めていく。残るのは、リスクを恐れて行動しない人材ばかり
・社員は自ら考えることを放棄し、受け身の姿勢に徹する。
 仮に動いても、ピントのズレた施策を繰り返す。
・そして、誰も責任を取らない

──これが、「優しさ」を経営に持ち込んだ会社の末路だ。
結果として残るのは、崩壊しつつある組織を誰も立て直せないという現実だけである。

だからこそ、最後にはっきりと言う。

少なくとも月に一度は、社員に適切な緊張感を与える場を設けよ。
社員が本気で目標達成を目指せるよう、具体的な報酬を提示せよ。
そして、「達成できなければ何かを失う」という恐怖を明確に伝え、
未達成時のペナルティを制度として明文化せよ。

そこまで踏み込めなければ、それは“経営”とは言えない。
市場は、静かに──だが確実に──そうした経営者に「退場」を命じる。

なぜなら、経営とは常に「結果」が問われる場であり、
甘さや情だけでは生き残れない現実の世界だからだ。

最後に、改めて問いたい。
あなたは今、どちらの道を選ぶのか?

社員の顔色をうかがいながら、ゆるやかに沈んでいく経営か。
それとも、“恐怖”という現実をルールに変え、
結果を出す組織へと生まれ変わらせる経営か。

5年後の成否は──今この瞬間、あなたが下す決断にかかっている。