2024年1~6月期決算発表後に、時価総額7600億円減という衝撃的な結果を招いた、日本TOP3の半導体デバイス企業であるルネサスエレクトロニクス。その原因は、産業機器や車載向けの需要動向を見誤ったことに加え、販売代理店への過剰な供給による在庫の積み上げにありました。

今回のルネサスエレクトロニクスの事例は、半導体業界における従来の販売方法の限界を浮き彫りにしました。特に、半導体商社を介した販売方法では、顧客のニーズを直接把握することが難しく、需要予測の精度が低くなりがちな点は大きな問題です。

では、ルネサスエレクトロニクスはどのようにすれば需要予測の誤りを防ぎ、今回の事態を回避できたのでしょうか?

答えは、自社マーケティングにDXシステムを導入し、半導体ユーザー企業との直接契約(中抜きスタイル)を実現することにあります。中抜きスタイルは、半導体デバイス企業とユーザー企業との関係をダイレクトに変えることで、以下のメリットを生み出すのです。

1.顧客ニーズの直接把握

従来の商社を介した販売では、顧客のニーズが歪められたり、情報が遅延したりすることがありました。しかし、中抜きスタイルなら、ユーザー企業と直接やり取りすることで、彼らのニーズや将来の計画を正確に把握することができます。

例えば、自動車メーカーがパワー半導体を開発する場合、従来であれば商社を通じて半導体デバイス企業から購入していました。しかし、中抜きスタイルでは、自動車メーカーは直接半導体デバイス企業と連携し、開発段階から共同で設計を行うことができます。これにより、顧客(自動車メーカー)のニーズに合致した、高性能で低コストな半導体を開発することが可能になるのです。

2.需要予測の精度向上

ユーザー企業との直接的な繋がりは、リアルタイムな情報収集を可能にします。顧客からの最新の需要情報や市場トレンドを把握することで、より正確な需要予測を行うことができるのです。

従来の商社を介した販売方法では、市場の変化に迅速に対応することが難しく、需要予測の誤りによる在庫過剰(今回のルネサスエレクトロニクスの件)や販売機会の損失といった問題がありました。

3.販売コスト削減

商社マージンが発生しないため、販売コストを大幅に削減することができます。コスト削減は、企業の利益率向上に繋がり、より競争力のある価格設定を可能にするのです。

ちなみに、1980年代に日本企業が販売していた半導体の世界シェアは実に50%を超えていました。しかし、価格が安かったため、各々の企業の営業利益率が低いという問題があったのです。

売上が高くても肝心の利益が低ければ新技術や新たな設備投資ができません。90年代に日本の半導体デバイス企業各社が、韓国のサムスン電子やSKハイニックスに惨敗し続けたのは、不景気による売上・利益減により、彼らに比べて設備投資額が圧倒的に少なかったことが原因でした。

4.顧客との強固な関係構築

商社を介さずに直接顧客と接することで、信頼関係を構築し、長期的な取引につなげることができます。顧客との強固な関係は、新規顧客獲得よりも、既存顧客からのリピート購入や紹介による売上増加に繋がり、企業の安定成長を支えるのです。

ちなみに、半導体企業が売上を伸ばしたい場合は、まずは既存顧客にアプローチする必要があります。既存顧客であれば広告費を使う必要もありません。あなたの企業が提供するサービスの質がわかっている既存顧客であれば、新規顧客よりも営業の難易度を下げることができるのです。

DXシステムを導入すれば中抜きを実現することができる

DXシステムは中抜きを実現するための強力なツールです。顧客との連携を加速し、販売プロセスを効率化することで、上記のようなメリットを最大限に引き出すことができます。ここでは、DXシステムを構築する4つの基幹システムについて解説します。

1.顧客情報管理システム

顧客の情報を一元管理し、ニーズや過去の購買履歴などを分析することで、正確な需要予測を可能にします。顧客の属性や購買パターンを分析することで、適切な商品やサービスを提供し、顧客満足度を高めることができるのです。

2.受注管理システム

受注から納品までのプロセスを効率化し、顧客への迅速な対応を実現します。顧客からの注文情報をリアルタイムに把握し、在庫状況や納期情報を正確に伝えることで、顧客満足度を向上させることができるのです。

3.在庫管理システム

リアルタイムな在庫状況を把握し、最適な在庫管理を行うことで、過剰な在庫を抱えるリスクを軽減します。需要予測に基づいた適切な在庫管理は、コスト削減に繋がり、企業の収益向上に貢献するのです。

4.マーケティングオートメーション

顧客ターゲティング、メール配信、キャンペーン管理など、マーケティング活動を自動化し、効率的に顧客との関係構築を進めます。顧客セグメントに基づいたパーソナライズされた情報提供は、顧客があなたの企業に対する愛着や思い入れを高め、購買意欲を促進するのです。

DXシステム導入による具体的な効果

DXシステムを導入することで、半導体デバイス企業は以下のような効果が期待できます。

1.売上向上

正確な需要予測と顧客との強固な関係構築により、売上を安定的に増加させることができます。顧客ニーズに合わせた商品開発や販売戦略により、売上拡大やコストカットを実現できるのです。

2.利益率向上

コスト削減と効率的な販売活動により、利益率を向上させることができます。販売コストの削減と販売効率の向上は、企業の収益性を高め、競争力を強化します。

先ほどもお伝えしましたが、80年代に日本の半導体デバイス企業は世界シェア50%を超えていながら、その後、成長できなかったのは、利益率が低く、それが原因で開発や設備投資にサムスン電子やSKハイニックスを上回る資金を投入できなかったからです。

3.競争力強化

中抜きによる顧客との直接的な繋がりは、競合との差別化に役立ち競争力を強化します。顧客との強固な関係構築は、競合他社との競争において優位性を発揮し、市場シェア拡大を促進します。

4.迅速な市場対応

顧客ニーズを迅速に把握し、変化する市場に柔軟に対応することができます。顧客からのフィードバックを迅速に反映することで、製品開発や販売戦略を柔軟に変更し、市場の変化に適応できます。

中抜きの成功事例

DXシステムを導入し、中抜きによる直接販売を実現している企業は数多く存在します。

例えば、欧州の半導体デバイス企業は、自社の開発した自動車用半導体を、商社を介さずに直接自動車メーカーに販売しています。これにより、顧客(自動車メーカー)のニーズを正確に把握し、開発段階から共同で設計を行うことで、高性能で低コストな半導体を開発することに成功しているのです。

また、産業機器メーカーは、IoTシステムの構築において、自社の開発したセンサーや制御システムを直接ユーザー企業に販売しています。これにより、ユーザー企業のニーズに合わせたシステム構築が可能となり、顧客満足度を高めることに成功しています。

まとめ:日本の半導体デバイス企業は中抜きを実現する必要がある

ルネサスエレクトロニクスの失敗は、日本の半導体業界の従来の販売方法の限界を浮き彫りにしました。自社マーケティングにDXシステムを導入し、顧客への直接販売を実現することで、顧客ニーズを正確に把握し、需要予測の精度を高め、売上・利益の向上を図ることが可能となります。

日本の半導体デバイス企業は、自社マーケティングにDXシステムの導入を積極的に進め、顧客との直接的な繋がりを強化することで、市場の変化に対応し、成長を続ける必要があるのです。

中抜きは単なる販売方法の変更ではありません。半導体デバイス企業とユーザー企業との関係を根本的に変える革新的な取り組みなのです。DXシステムを活用し、顧客との連携を強化することで、半導体デバイス企業はさらなる成長と発展を遂げることができるでしょう。

半導体マーケティング代行サービス officeじょに
代表 田中レジナルド

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今回の記事では、ルネサスエレクトロニクスの事例を取り上げ、半導体企業が中抜きを実施して、売上・利益アップを実現することのメリットを、具体的な成功事例とともに解説してきました。

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