もしあなたが──

「営業やマーケティングは、部下に任せてるから大丈夫」
「社長は現場に口出しせず、見守るのが正しい」
「結果が出なければ、そのときに指導すればいい」

──そう思っているのなら、今すぐその考えを捨てよ。

それは信頼ではない。怠慢である。
そして、その油断が、気づかぬうちに会社の屋台骨をじわじわと壊していく。

一見すると、
部下の自主性を尊重し、権限を委譲する姿勢は
「良き経営者」のように見える。

だが、それは幻想である。

なぜなら、その考えには、
「部下は正しい仕事をしている」という
“思い込み”があるからだ。

もし、部下が“間違った方向”に進んでいたとしたら──
あなたはその暴走を、ただ黙って眺めていることになる。

会社の成長が止まっている──
売上がここ数年、横ばいか、もしくは微減しているとしたら、
その最大の原因は、部下の“営業”や“マーケティング”がズレているからだ。

あなたが社長であるなら──
「任せている」という言葉の裏に、責任から逃げたいだけの自分が潜んでいないか?
いま一度、自分自身に問いかけてみる必要がある。

そもそもの”認識”が間違っていたら成功するはずがない

ここで、ある20代女性の話をしよう。

彼女は「より良い男性と結婚したい」と願い、結婚相談所に登録した。
──入会金30万円。覚悟を決めて、未来を変える一歩を踏み出したのだ。

カウンセリングでは、職員にこう伝えた。
「高望みはしません。希望年齢は私と同じ20代。年収は普通でいいです。」

それを聞いた職員は安心した表情でこう答えた。
「“普通の年収”の20代男性なら、ウチにたくさんいますよ。」

しかし──1週間後。
彼女は結婚相談所に怒鳴り込んできた。
「“普通の年収”の男性が、まったくいないじゃないですか!!」

職員は困惑しながら尋ねた。
「ちなみに、“普通の年収”って、いくらぐらいを想定されてますか?」

彼女は堂々と答えた。
「700万円です。」

──そう。
ズレていたのは、男性に求める“条件”ではなく──彼女の常識そのものだった。

彼女の中では、「普通=700万」だった。
だが、実際の20代男性の平均年収は、300万~450万円程度にすぎない。

つまり、最初の前提が間違っていたために、
その後の選択・判断すべてが見当違いの方向に進んでしまったのだ。

彼女がうまくいかなかった理由は、
「容姿」「性格」「家事スキル」といった表面的なことではない。

認識のズレに気づかず、誤った前提のまま行動を始めてしまったこと──
それこそが、彼女の落とし穴だった。

そしてこの“誤認”は、
あなたの会社の中でも──今まさに進行している。

経営の失敗は「確認していなかった」ことから始まる

あなたの部下は、毎月こう言ってくるはずだ。
「今月も最高のマーケティングやりましたよ!」
──だが、ここで立ち止まって考えてほしい。

その「やりました」の中身を、あなたは本当に確認しているか?
その「マーケティング」という言葉を、部下と同じ定義で語れる自信があるか?

先ほどの女性の話を思い出せ。

「普通の年収」──という思い込みで、30万円の投資が無駄になった。
あなたの部下が言う「マーケティング」も、それと同じ可能性がある。

たとえば──
部下がこんなことを“マーケティング”だと思っていたらどうだ?

・展示会に出展した
・インスタグラムに“映える”写真を投稿した
・「地味だけど、すごい。」というテレビCMを流した
・経営陣がYouTubeで“カバンの中身”を紹介した

──どれも、それらしくは見える。
だが、それは“マーケティングっぽいこと”にすぎない。

誤解してはならない。
マーケティングとは──営業社員によるセールスを不要にすることである。
つまり、見込客が自ら問い合わせてくる仕組みを作ること。これがマーケティングだ。

展示会も、インスタも、CMも、YouTubeも──それ自体が悪いのではない。
だが、成果に繋がらないのなら、すべてただの自己満足だ。
認知度アップ、好感度アップ“だけ”を目的とした活動は──マーケティングではない。

だからこそ、あなたは部下の言葉を鵜呑みにしてはならない。
“信頼”は、「確認」を経て初めて成立する。

経営者は、部下と仕事の定義をすり合わせ、確認し、修正を促す責任を負っている。
それを放棄する者に──経営者たる資格はない。

経営者に求められるのは、“信じる”ではなく“確認する覚悟”だ

社長には“部下の仕事に関与しない自由”がある。
だが、それは同時に、“成果を見届ける責任”と
“部下の仕事が正しいかを確認する責任”を背負うということだ。

この責任から逃げてはならない。
部下が「やってます」と言った瞬間に、必ずこう問いかけよ。

✔️「そもそも君は、何を“仕事”だと考えているのか?」
✔️「実際に、どんなことをやったのか?」
✔️「で、その結果はどうだった?」

これらの問いかけを日々の習慣とし、明文化されたルールとして組織に根付かせよ。
それこそが──失敗を未然に防ぎ、組織を成長軌道に乗せる“唯一の経営手段”である。

なぜなら──
確認なき信頼は、ただの放置でしかない。
それは部下への優しさではない。経営の怠慢であり、逃避である。

“信頼して任せる”という言葉を隠れ蓑にして、
現場を放置し、何も確認しないのであれば──
あなたはもはや経営者ではない。ただの“責任から逃げる人”だ。

最後に、ハッキリと言う。
今すぐ、全社員の「仕事の中身」を確認せよ。

そして、
あなたの考える“仕事”と部下の考える“仕事”にズレがあると気づいたなら──
遠慮も、配慮もいらない。冷徹に、徹底的に、修正せよ。

それこそが──
競争の激しい半導体業界で、あなたが勝ち続けるための
唯一のマーケティング戦略である。