もしあなたが──
「事業撤退が決まったら、あとは値下げして在庫を捌けばいい」
「撤退なんて雑務だ。窓際社員に任せておけば十分だ」
「撤退時こそ、“社員思いの社長”として、最後まで寄り添うべきだ」
──そう考えているのなら、今すぐその甘い幻想を捨て去れ。
なぜなら、事業撤退はただの“後始末”ではない。
むしろ、最後に最大の利益を生み出す──経営にとって最も重要な局面なのだ。
ここを雑に扱えば、
あなたがこれまで積み上げてきた技術、信用、人材、時間、資金……
そのすべてを、自らの手でドブに捨てることになる。
だからこそ、撤退は“消化試合”ではない。
むしろ──未来へ続く、最終戦であり、経営者としての腕の見せどころなのだ。
ここで中途半端な情や社内政治に流されていては、会社ごと沈むことになる。
だが正しい手順と戦略があれば──撤退は、勝利として終わらせることができる。
撤退発表を急ぐと、売上と利益を失う
断言する。
撤退を決めたその瞬間に、何の準備もなく社外へ発表してしまうのは──
未熟な経営者がやることだ。
ましてや、発表後に“値下げ”などしようものなら──
それは自らの首を絞める行為にほかならない。
・「できるだけ早く在庫を捌きたい」
・「撤退事業部の社員たちの次の配属先を考えるために、時間を稼ぎたい」
・「顧客へのこれまでの感謝をこめて、少しでも安く届けたい」
──これらすべてが、「社員や顧客への思いやり」を口実にした的外れな判断だ。
それは、経営者としての決断を放棄し、
周囲の顔色ばかりを気にする“逃げの姿勢”にすぎない。
ここで、あなたに問いかけよう。
撤退を発表し、値下げまでしたその瞬間──いったい何が起きるか?
・事業そのものの価値が、限りなくゼロに近づく
・利益率は、最後の最後で完全に崩壊する
・あなたの製品を買うのは、“安さ”しか見ていない顧客だけになる
──こんな終わり方で、あなたは胸を張れるのか?
まるで、沈みかけた船から、自らの手で積み荷を海に投げ捨てているようなものだ。
撤退発表を焦れば、本来回収できたはずの売上も、利益も──すべて水の泡となる。
その判断ミスは、単なる“終わり方の失敗”では済まない。
なぜなら、企業の“収益の土台”そのものが、一瞬で崩れ去るからだ。
価格を上げ、シェアを減らせ──その後、撤退を発表せよ
撤退局面で、あなたがやるべきことは、ただ一つだ。
価格を上げろ。そして、自らの手で市場シェアを削ぎ落とせ。
ここで最も重要なのは、“順番”を間違えないことだ。
「撤退」の発表を先にしてはいけない。
この順番を間違えた瞬間──本来確保できたはずの利益は、すべて消えてなくなる。
まずやるべきは、価格の吊り上げだ。
当然、販売数は減る。
だが、それでいい。むしろ──それこそが狙いだ。
次にやるべきは、利益が消える“その瞬間”を見極めることだ。
意図的に赤字に突入させたタイミングで、初めて撤退を発表せよ。
なぜか?理由はシンプルだ。
✔ 価格を上げれば、販売数は自然と減る
✔ 販売数が減れば、変動費・固定費の圧縮が可能になる
✔ コスト構造をスリム化すれば、利益が最大化される
✔ 市場シェアは縮小するが、撤退するのだから問題ない
つまり、撤退を「勝ち」に変える鍵は、この撤退プロセスの設計にある。
重要なのは、発表のタイミングと利益の刈り取り方を、
緻密にコントロールすることである。
だからこそ、「撤退を伝える前」に価格を引き上げ、
顧客に気づかれることなく、利益をしっかりと抜き取れ。
そして、計画通りにすべてを終えたら──静かに、確実に、事業をたため。
これは、単なる撤退ではない。
最終利益を最大化し、堂々と去るための“プロフェッショナルな離脱戦略”だ。
それは──冷静な経営者にだけ許された“勝ち逃げ”の美学でもある。
正しく撤退せよ──「撤退」は最大の収益機会である
事業撤退の成否を分けるのは、経営判断の“スピード”と“精度”だ。
判断をほんのわずかでも誤れば──会社は損失を抱え、未来の選択肢を失うことになる。
だからこそ、迷うな。判断を先送りするな。
たった一歩の遅れが、将来得られるはずだった利益すべてを消し去る。
以下は、不採算事業の撤退が決定したとき、
社長であるあなたが“即座に実行すべきアクション”である。
✔ 撤退が決まったことは、絶対に顧客に漏らすな
✔ 撤退事業の製品は、今すぐ価格を吊り上げよ
✔ 市場シェアは、自らの手で削ぎ落とせ
✔ 利益が出る限り、売り続けろ
✔ 利益が消えた瞬間に、撤退を発表せよ
✔ 「撤退部署の社員は、最後まで面倒を見る」などという幻想は、捨てろ
社長の仕事は、社員の気持ちに寄り添うことではない。
会社と社員、そして未来のために、冷徹に“数字で決断”することだ。
撤退とは、敗北ではない。
正しく設計された撤退は、
会社にもたらす利益を最大化する“最高の出口戦略”となる。
そして──撤退は、単に事業を終わらせるための手続きではない。
それは、これまで積み上げてきた技術や信頼、投資の成果を、確実に
利益として回収する“最後の収穫の場”なのだ。どれだけ綿密に設計し、
どれだけ冷静に実行できるかで、得られる成果は天と地ほど違う。
だからこそ──最後に、はっきりと言う。
利益を可能な限り確保し、余計な損失を出すことなく、スマートに事業を収束させろ。
そして──誰よりも冷静に、誰よりも洗練されたプロセスで、事業を締めくくれ。
それこそが──
半導体社長がやるべき唯一の“撤退戦略”であり、
経営者に課された“本物の経営判断”なのだ。