2021年に日本で問題化した半導体不足。世界的なデジタル化の波は、あらゆる産業において電子機器への依存度を高め、その心臓部である半導体への需要はかつてないほどに高まっています。
この巨大な成長市場において、半導体デバイス企業は、従来の商社経由の販売モデルのみならず、半導体ユーザー企業と直接取引を行う『中抜き』というビジネスモデルを戦略的に活用することで、更なる成長を遂げることが可能になるのです。
今回の記事では、半導体デバイス企業が半導体の受託生産案件において、商社を介さずに顧客を獲得し、売上アップを実現するために必要なノウハウを、具体例を交えながら解説していきます。
長らく、商社は顧客ネットワークと輸出入手続きに関する豊富なノウハウを駆使し、半導体デバイス企業と顧客を繋ぐ重要な役割を担ってきました。しかし、インターネットの普及は、情報収集のあり方を根底から変え、顧客が自ら情報を入手し、直接取引を行うことが一般的になりつつあります。
このような変化の激しい時代において、半導体デバイス企業は、従来の商社依存型のビジネスモデルを見直し、顧客との距離を縮める『商社レス』、つまり、『中抜き』戦略を採用することで、市場競争を優位に進めることが可能となるのです。
目次
テーマ1:中抜きがもたらす3つの大きなメリット
中抜きは、半導体デバイス企業にとって、収益性向上、顧客との関係強化、ブランド価値向上など、多岐にわたるメリットをもたらします。
1.利益率の劇的な向上
商社へのマージンが不要となることで、製品価格をより戦略的に設定できるようになり、企業収益を飛躍的に増加させることが可能となります。例えば、10%のマージンを計上していた商社を介さずに販売することで、その分収益が増加し、さらなる研究開発や設備投資に充てることができます。
2. 顧客との強固な信頼関係構築
商社を介さない直接取引は、顧客との距離を縮め、より密接なコミュニケーションを実現します。顧客のニーズを直接的に把握し、製品開発やサービス提供に迅速かつ柔軟に反映することで、顧客満足度を向上させ、長期的な信頼関係構築の基盤を築くことができるのです。
3. 揺るぎないブランド価値の確立
顧客との直接的な対話を通じて、企業理念や製品に込めた技術力、品質へのこだわりをダイレクトに伝えることができます。これは、顧客からの共感と信頼を生み出し、企業や製品ブランドの価値向上に大きく貢献します。
テーマ2:中抜きにおける4つの課題と解決策
中抜きは、収益拡大や顧客との関係強化といった大きなメリットがある一方で、半導体デバイス企業が自力で解決しなければならない課題も存在します。しかし、これらの課題は、適切な戦略と準備によって克服できるものです。
1.営業・マーケティング活動の負担増加
顧客開拓から受注、アフターフォローまで、全てのプロセスを自社で行う必要があるため、営業・マーケティング部門の組織強化と業務効率化が求められます。
解決策
業界経験豊富な人材の採用や、社内人材育成プログラムの実施により、専門知識を持った営業・マーケティングチームを構築します。例えば、海外顧客への対応を強化するために、語学力と海外ビジネス経験豊富な人材を採用したり、既存社員向けに語学研修や異文化理解研修を実施するなどの取り組みが考えられます。
2. 輸出入手続きや物流への対応
商社が担っていた輸出入手続きや物流、在庫管理を自社で行うためには、専門知識やノウハウの習得が必須です。
解決策
貿易実務や物流に関する専門部署を社内に設置し、輸出入手続き、通関手続き、国際物流、在庫管理などを一元管理します。この部署では、輸出入に必要な書類作成、船便や航空便の手配、関税や消費税の納付、倉庫管理などの業務を行います。専門家を配置することで、輸出入手続きをスムーズに行い、遅延やトラブルを未然に防ぐことができます。
3. 与信管理リスクの増加
顧客の倒産などによる未回収リスクを自社で負う必要があり、財務状況の悪化に備えた対策が重要となります。
解決策
顧客の信用調査を徹底し、財務状況、経営状況、取引実績などを事前に把握します。企業データベースや信用調査会社を利用することで、効率的に情報収集を行うことができます。顧客の財務状況や信用度を事前に把握することで、未回収リスクを低減することができるのです。
4. 顧客とのコミュニケーション不足
これまで商社が担っていた顧客とのコミュニケーションが不足し、誤解やトラブルに繋がる可能性があります。
解決策
定期的な訪問やWeb会議、メールなどを通じて、顧客とのコミュニケーションを積極的に図ります。顧客との信頼関係構築には、積極的なコミュニケーションが不可欠です。顧客とのコミュニケーション回数を増やすことで、ニーズの変化をいち早く察知し、柔軟に対応することができます。
テーマ3:中抜きで受託生産案件を獲得するための4つの戦略
半導体デバイス企業が中抜きで成功するためには、顧客のニーズを深く理解し、自社の強みを最大限にアピールしていく戦略が不可欠です。以下に、具体的な戦略を4つのフェーズに分けて解説します。
フェーズ1: ターゲット顧客の明確化とニーズ分析
まず、自社の技術力や製品が、どのような顧客に、どのような価値を提供できるのかを明確にすることから始めます。闇雲に顧客を探すのではなく、ターゲットを絞り込むことで、より効果的なマーケティング活動が可能となります。
1.ターゲット顧客の明確化
業界、企業規模、技術分野、製品用途など、具体的な顧客像を設定します。
例:
あなたの企業が、高性能・高信頼性を求められる車載向け半導体の開発に強みを持つ場合、ターゲットは、自動運転技術を開発する大手自動車メーカーや、先進運転支援システム(ADAS)を開発する自動車部品メーカーとなります。この際、ターゲット企業の規模や予算、開発体制なども考慮し、自社の技術力や生産能力に見合った顧客を選定することが重要です。
2. ニーズの深掘り
ターゲット顧客が抱える課題やニーズを徹底的に分析します。顧客の製品開発における課題、求める半導体製品の性能・価格・納期などを詳細に把握することが重要です。顧客へのヒアリングや市場調査などを実施し、顧客のニーズを多角的に分析します。
例:
顧客が電気自動車の航続距離延長を課題としており、バッテリーの省電力化を重視していることが判明した場合、低消費電力技術をアピールポイントに据え、顧客のニーズに合致した提案を行うことができます。顧客が現在使用している半導体製品や競合製品の情報も収集することで、自社製品の優位性を明確に示すことができます。
3. 徹底的な競合分析
競合となる企業の技術力、製品ラインナップ、価格帯、営業戦略などを分析し、自社の強みと弱みを客観的に把握します。自社の市場におけるポジションを明確化するために必要な業務です。
例:
競合が低価格戦略を取っている場合、差別化のために高品質・高信頼性を前面に押し出す戦略が考えられます。高付加価値製品の開発や、長期保証の提供など、顧客に選ばれるための差別化戦略を検討します。競合の営業戦略を分析することで、顧客との接点をどのように持ち、どのような提案を行っているのかを把握することができるのです。
フェーズ2: 差別化された技術力・製品力の訴求
数ある競合企業の中から選ばれるためには、自社の強みを明確に打ち出し、顧客に「なぜ自社を選ばなければならないのか」を理解してもらう必要があります。顧客は、常に「自社にとってのメリット」を求めていることを意識しましょう。
独自技術をアピールし、顧客に自社の圧倒的な優位性を感じてもらう
特許取得技術や長年培ってきたノウハウなど、他社にはない独自技術をアピールポイントにしましょう。顧客は、他社では実現できない独自の価値を求めています。
例:独自の省電力技術により、競合製品と比較してバッテリー寿命を20%向上させることができます。
この技術により、顧客は、製品の競争力を高め、市場での優位性を確保することができます。顧客の製品開発に貢献できる具体的なメリットを数値で示すことで、自社製品の魅力をより効果的に伝えることができるのです。
高品質・高信頼性で顧客の信頼を獲得
品質管理体制の強化や国際規格の取得など、製品の品質と信頼性を担保する取り組みを積極的にアピールしましょう。顧客は、製品の品質に不安を抱くことなく、安心して取引できる半導体企業を求めています。
例:国際規格ISO 9001を取得し、厳格な品質管理体制のもとで製品を製造しています。
第三者機関の認証を取得することで、顧客に品質に対する信頼感を提供することができます。また、過去の製品納入実績や顧客満足度調査の結果などを提示することで、自社の品質管理能力の高さを証明することができます。
柔軟な対応力で顧客の期待を超える
顧客のニーズに合わせた柔軟な設計・開発体制や、小ロット・短納期対応など、顧客の要望に寄り添う姿勢をアピールしましょう。顧客満足度を高めるためには、顧客のニーズに柔軟に対応することが重要です。
例:我が社は、お客様の要望に応じて、試作品を短期間で製作する体制を整えています。
顧客との綿密なコミュニケーションを通じて、ニーズを的確に捉え、柔軟な対応を実現します。顧客の要望に対して、単に「できません」と断るのではなく、「こうすれば実現できます」と代替案を提示することで、顧客との信頼関係を築くことができるのです。
フェーズ3: 戦略的なマーケティング活動の実施
顧客との接点を創出し、自社の魅力を効果的に伝えるためには、戦略的なマーケティング活動が不可欠です。デジタルマーケティングとオフラインマーケティングを組み合わせ、多角的に顧客にアプローチすることで、より効果的に顧客を獲得することができます。
多言語対応のウェブサイトで世界へ
企業情報、製品情報、技術情報などを掲載したウェブサイトを多言語で構築し、世界中の顧客を獲得しましょう。ウェブサイトは、世界中の潜在顧客に対して、24時間365日、自社の情報発信を行うことができる強力なツールです。
例えば、SEO対策を施し、検索エンジンからの流入増加を目指します。ターゲットキーワードを分析し、ウェブサイトコンテンツに反映させることで、検索エンジンのランキングで上位表示を目指します。SEO対策をしっかりと行うことで、多くの潜在顧客に自社のウェブサイトを訪問してもらい、製品やサービスの情報に触れてもらうことができるのです。
また、SEM(検索エンジンマーケティング)を活用し、より多くの潜在顧客にアプローチする必要もあります。SEMは、検索エンジンの広告枠に表示される広告を掲載することで、ウェブサイトへのアクセス数を増加させるマーケティング手法です。費用対効果の高いマーケティング手法として知られており、新規顧客獲得に効果的です。
顧客の心を掴むコンテンツマーケティング
顧客の課題解決に役立つ技術資料、事例紹介、ホワイトペーパーなどのコンテンツを制作し、ウェブサイトやメールマガジンで配信しましょう。
コンテンツマーケティングは、顧客に価値ある情報を提供することで、顧客との信頼関係を構築し、購買意欲を高めるマーケティング手法です。半導体デバイスのような商品の場合、顧客は半導体の性能の高さではなく、電化製品への導入事例を求めていることが多いため、コンテンツマーケティングは非常に有効な手段となります。
他にも、ウェビナーやオンラインセミナーなどを開催し、顧客と直接コミュニケーションを取ることで、半導体やサービスに対する理解を深めてもらう方法もあります。ウェビナーやオンラインセミナーは、オンライン上で顧客と直接コミュニケーションを取ることができるため、半導体やサービスを詳しく説明したり、顧客の疑問に答えたりすることができるのでオススメです。
展示会・セミナーで顧客と直接対話
半導体業界の展示会やセミナーに積極的に出展し、半導体や半導体の性能の高さを直接アピールしましょう。顧客との名刺交換や商談の機会を創出し、関係構築に繋げます。展示会やセミナーは、多くの潜在顧客と直接会って、自社の半導体やサービスをアピールできる貴重な機会です。
例:
展示会やセミナーで自社技術を紹介するセールス動画を通して、半導体の性能や電化製品への導入事例を効果的にアピールすることもできます。セールス動画を通して、実際にあなたの企業の技術を見せることで、顧客の半導体に対する理解を深め、購買意欲を高めることができるのです。
例:
展示会やセミナーで配布するパンフレットやノベルティにも工夫を凝らし、顧客の印象に残るようにします。パンフレットは、あなたの企業が製造する半導体やサービスを詳しく紹介するために必要不可欠なツールです。ノベルティは、顧客にあなたの企業のことを覚えてもらうために効果的なアイテムとなります。
Facebook、Twitter、YouTubeなどを活用し、幅広い顧客層への認知拡大を図る
FacebookやTwitterなどのSNSは、企業の認知度向上やブランドイメージ向上に効果的です。動画共有サイトYouTubeでは、企業紹介動画や製品紹介動画などを配信することで、顧客の購買意欲を高めることができます。
フェーズ4: 顧客との長期的なパートナーシップを築く
受託生産案件は、顧客との長期的な信頼関係が成否を分ける鍵となります。しかし、顧客との信頼関係は、一朝一夕に築けるものではなく、長期的な視点に立った取り組みが必要です。
密なコミュニケーションで信頼関係を築く
定期的な訪問やWeb会議、メールなどを通じて、顧客とのコミュニケーションを密に取りましょう。顧客の状況を常に把握し、変化に迅速に対応することで、顧客満足度を向上させることができます。受託生産は、顧客と協力して製品開発を進めていくため、密なコミュニケーションが不可欠なのです。
顧客の潜在的なニーズや課題をヒアリングし、最適なソリューションを提案することで、信頼関係はより強固なものとなります。顧客のビジネスを深く理解し、真のパートナーとして、課題解決に貢献することが重要です。顧客が抱える課題を解決するために、積極的に提案を行い、顧客の期待を超える成果を出すことで、信頼関係を築くことができます。
迅速かつ丁寧な対応で顧客満足度向上
顧客からの問い合わせや依頼に対して、迅速かつ丁寧に対応することで、顧客満足度を高めましょう。顧客からの問い合わせには、迅速かつ的確な回答を心がけ、顧客の時間を無駄にしないようにします。迅速な対応は、顧客満足度向上に大きく貢献します。
小さな要望にも真摯に対応することで、信頼獲得に繋がるのです。顧客の要望に対して、常に『顧客第一』の姿勢で向き合い、期待を超えるサービスを提供することで、顧客との長期的な関係を築くことができます。
契約内容の明確化でトラブル防止
納期、価格、仕様、知的財産権など、契約内容を明確にすることで、トラブルを未然に防ぎます。契約書は、双方にとって誤解のない内容にすることが重要です。契約内容に不明点や疑問点があれば、事前に解決しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
契約締結後も、顧客と定期的にコミュニケーションを取り、進捗状況や問題点などを共有することで、トラブルを未然に防ぐことができます。定期的な進捗報告や情報共有は、顧客との信頼関係を維持するためにも重要です。
テーマ3:中抜きを成功させるための組織体制と人材育成
中抜きを成功させるためには、組織全体で戦略を共有し、必要なスキルを備えた人材を育成することが重要です。中抜きは、一過性のプロジェクトではなく、企業として持続的な成長を実現するための長期的な戦略なのです。
専門性の高い人材育成
営業、マーケティング、輸出入手続き、法務など、中抜きに必要な専門知識を持った人材を育成しましょう。専門性の高い人材は、企業の競争力を高める上で重要な資産となります。
外部研修の活用や資格取得の支援なども有効です。従業員一人ひとりの能力開発に投資することで、企業全体のレベルアップを図ることができます。
例:
貿易実務検定や通関士などの資格取得を支援することで、輸出入手続きに関する専門知識を習得させます。その他、マーケティングや営業に関する資格取得支援、語学研修なども有効です。
全社横断的な組織体制の整備
中抜きに対応した組織体制を構築し、各部門が連携して業務を進められるようにしましょう。部門間の連携を強化することで、情報の共有や意思決定のスピードアップを図ることができ、顧客への対応力も向上します。
営業部門、マーケティング部門、生産管理部門などが密接に連携することで、スムーズな受注から納品までを実現できます。各部門が連携し、顧客情報を共有することで、顧客満足度を高めることもできます。また、情報共有や連携をスムーズに行うための社内システムを構築することも重要です。
ITツール導入による業務効率化
顧客管理システム(CRM)やマーケティングオートメーションツールなどを導入することで、業務効率化とデータ分析による戦略立案を推進します。ITツールを導入することで、業務を効率化し、人材不足を補うことができます。また、データ分析を通じて、より効果的な戦略を立てることができるのです。
4. まとめ: 中抜きで切り拓く半導体企業の未来~変化を機会に新たなステージへ
世界的な半導体需要の高まりを背景に、競争が激化する中、商社を介さない中抜きというビジネスモデルは、半導体デバイス企業にとって大きな成長機会となります。
中抜きは、収益性向上、顧客との直接的な関係構築、ブランド価値向上など、多くのメリットをもたらします。しかし、成功には、顧客ニーズを的確に捉え、自社の強みを最大限にアピールしていく戦略が不可欠です。
効果的なマーケティング活動を通じて顧客との接点を増やし、強固な信頼関係を構築していくことが、中抜き成功の鍵と言えるでしょう。今回の記事で紹介したノウハウを参考に、自社の強みを最大限に活かした戦略を実践することで、半導体デバイス企業は、中抜きという新たなビジネスモデルで、更なる成長を遂げることができるでしょう。
半導体マーケティング代行サービス officeじょに
代表 田中レジナルド
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