もしあなたが──
「現場の判断で多少の値引きは仕方ない」
「値引きは望ましくないが、顧客が喜ぶのならアリだ」
「新人営業社員に契約を取らせるには、値下げも必要だ」
──そう考えているのなら、あなたの会社は、すでに静かに衰弱し始めている。
そして、その衰弱を引き起こしている“病巣”──それが「値引き」という行為だ。
勘違いしてはならない。
値引きは、“営業の腕前”として、かっこよく語られるようなスキルやノウハウではない。
ましてや、「会社の利益に貢献する正当な手段」として賞賛されるような行為でもない。
それは、利益という血液を自ら流し続ける行為であり、
会社の体力と将来性をじわじわと奪っていく──まさに自滅型経営の典型である。
しかも、それが社内で“当たり前”のように繰り返されているとすれば──
その企業はすでに、経営の土台が静かに崩れ始めている状態にある。
そして、あなた自身がこの状況に対して何の手も打っていないとすれば、
もはや「仕方ない」では済まされない。
これは、経営責任の放棄であり、
未来の収益も、ブランド価値も、社員の人生すらも危機に晒す──
経営者としての明確な“過失”である。
値引きは、企業の動脈を切る行為である
営業は──絶対に値引きをするな。
これは、新入社員に最初に叩き込むべき“営業の絶対ルール”であり、
ビジネスマナーやコンプライアンス以前に、売る側の“倫理”として守らせるべき掟だ。
それはなぜか?
値引きは、会社の利益を食い潰す最も危険な行為だからだ。
想像してみてほしい。
あなたの会社が、価格1000万円、粗利30%の製品を販売しているとしよう。
営業が、顧客からの一言に押されて「じゃあ少し下げます」と安易に応じ、
たった10%値引きしただけで──
利益は300万円(30%)→ 200万円(20%)に激減する。
つまり、たった一言で、100万円の利益が音もなく消し飛ぶのだ。
この100万円は、単なる、帳簿上の“売上値引き”ではない。
それは、未来の研究開発費であり、社員に支払うはずだった報酬であり、
次なる成長投資を可能にする“企業の血液”だ。
そのかけがえのない未来資源を、
営業の“その場しのぎの妥協”で毎日のように失っている──
あなたは、この重大さに本当に気づいているだろうか?
しかも、値引きしたところで売上金額は大して変わらない。
むしろ、利益という“酸素”が急激に薄れていく。
社内は息苦しくなり、組織には余裕がなくなり、
やがて──“自転車操業”という名の地獄が待っている。
そして、もっと恐ろしいのは“市場の評判”だ。
「あの会社は、言えば値下げしてくれる」
「強気に出れば、いくらでも下がる」
そんな噂が一度でも市場に流れれば、価格の主導権は完全に顧客側に奪われる。
ここから先は、仁義なき価格競争の始まりである。
値引き合戦、競合との消耗戦、価格しか話題にならない商談──
勝機なき“値下げレース”に、あなたの会社は引きずり込まれていく。
数字だけを見れば、
“受注件数”や“売上高”は伸びているように見えるかもしれない。
だが、手元に残る現預金は、確実に減っていく。
気づけば、資金がショートし始め、資金繰りは綱渡り。
給与は滞り、ボーナスは削られ、社員の士気は下がり──
そして、優秀な人材から辞めていく。
これが、「値引き依存企業」の末路である。
“利益”を知らぬ営業社員が、会社を壊す
価格とは、製品の性能でもなければ、パンフレットの見栄えでもない。
それは──会社の“価値そのもの”を、一瞬で伝えるための手段である。
にもかかわらず、“価格決定”という経営の最前線を、
営業現場に丸投げしている企業がいかに多いことか。
営業は「高いと言われたら値引く」ことを“優しさ”だと思っている。
だがその実態は、経営の地雷を笑顔で踏みに行っているにすぎない。
なぜそんな愚行が起こるのか?
それは、彼らが「価格の哲学」を知らないからである。
価格の裏にある戦略も、利益率の意味も、
会社の資本構造や資金の流れも、まったく見えていない。
だから、顧客に「高いですね」と言われると、
反射的に「じゃあ下げます」と言ってしまう。
これは営業の責任ではない。
教えていない経営陣──とりわけ社長の責任である。
そして、さらに致命的なのが、利益への意識の欠如である。
営業社員の99%は、「売ること」には必死でも、
「どうやって利益を最大化するか」には1ミリも意識が向いていない。
言い換えれば──彼らは、“利益の本当の意味”を知らない。
✔︎ 利益がなければ、新製品の研究開発費は出せない
✔︎ 利益がなければ、最新設備への投資もできない
✔︎ 利益がなければ、優秀な人材をリクルートできない
✔︎ 利益がなければ、未来の競争力そのものが失われる
つまり──
値引きは、会社の“未来”を削り取る行為であるということを、
彼らはまったく理解していないのだ。
値引きの権限を、即刻、営業から取り上げよ
値引き文化を断ち切り、必要な利益をしっかりと確保するためには──
まず、トップが旗を振らねばならない。次の5つを、今すぐに実行せよ。
1. 値引きは「全面禁止」である。社長の名のもとに、全社に通達せよ。
2. 価格決定は社長の専権事項とし、営業との間に明確な“線”を引け。
3. 営業には、「高く売るスキル」について徹底的に教育せよ。
4. 値引きせずに売り切った営業社員の労をねぎらい、毎月表彰せよ。
5.「安売りは恥」「値引きは逃げ」という思想を、社内の常識にせよ。
これは、単なる社内ルールではない──
これは、“経営理念”であり、“戦略思想”そのものである。
価格という武器を、現場に好き勝手に使わせることは──
戦場で「砲撃のタイミングも、狙う相手も好きに決めろ」と命令するようなものだ。
そんな軍隊が、戦に勝てるはずがない。
価格を守るのは、社長の責務である
どれだけ技術が優れていようと、
どれだけ誠実なサービスを提供していようと──
「安くしか売れない会社」は、やがて沈む。
企業の真の競争力とは、
“高くても選ばれる理由”を持っているかどうか──この一点に尽きる。
マーケティングとは、「高くても売れる仕組みをつくること」。
営業とは、その仕組みの中で
“価値を伝えるプロフェッショナル”でなければならない。
今すぐ、価格に関する覚悟を、社員一人ひとりに明確に伝えよう。
組織が本当に強くなるためには、まず現場の価値観を根本から変える必要がある。
「価格とは、お前たち営業が守るべき“会社の武器”である」
「値引きは、会社の儲けを台無しにする“裏切り行為”である」
「給料やボーナスは、お前たちが守った利益から生まれているのだ」
価格を守る者だけが、会社を守ることができる。
そして、価格を語れぬ社長に、未来を語る資格はない。
未来の利益は、今この瞬間の決断で決まる。
あなたの“一声”が、会社の未来を変える。
経営者としての覚悟を、いまこそ価格に宿せ。