もしあなたが──
「製品は1つだけ作り、それを全力で売るべきだ」
「廉価版を出すとブランド価値が下がる」
「技術力には絶対の自信がある。あとは営業の努力次第だ」
──そう信じているのなら、今すぐにその考えを改めよ。
その信念こそが、いま会社の成長を止めている元凶だ。
現実を直視せよ。
いま、あなたの“本命製品”が選ばれていない理由は、ただ一つ──
顧客が、その良さを理解できていないからである。
そして、顧客がその良さに気づけないのは、あなたの製品を“体験”できていないからだ。
カタログにどれだけスペックを並べても、
顧客は「それが自分にとってどう良いのか」を判断できないのである。
だからこそ必要なのは、「まず使わせるための製品」──つまり、“劣化版”だ。
それは「売上のため」ではなく、
顧客に価値を実感させるためだけに存在する“戦略”なのである。
売上を伸ばしたければ、“本命”の劣化版を売れ
あなたの会社が誇る“本命製品”には、たしかに優れた技術が詰まっている。
だが、その“良さ”を、顧客にどう伝えているだろうか?
カタログにスペックを並べるだけで、「あとは読めば分かるだろう」と思っていないか?
展示会で「高性能です!」と連呼して、それで十分だと思っていないか?
商談の場で、「ぜひ弊社を採用してください」と懇願するのが、営業だと思っていないか?
──もはや、そうしたやり方だけでは結果につながらない時代になっている。
顧客が求めているのは、「とにかく高性能な製品」ではない。
彼らが知りたいのは、「他の製品と比べて、何がどう違うのか」である。
その違いを理解したうえで、最も納得できる選択をしたいのだ。
だが──その“違い”が、カタログの数字や営業トークだけでは伝わらない。
ましてや、他社も同じように「当社の技術は優れている」
「この性能が売りです」と声を張り上げている状況では、なおさらである。
結果、どうなるか?
顧客の目には、各社の製品がどれも同じに映ってしまうのだ。
スペック、保証期間、細かな機能の違い──そうした要素が、“違い”として認識されない。
そして、こうなる。
「違いがないのなら、安いほうでいい」──これが、顧客心理の本質である。
ゆえに必要なのは、顧客にまず使ってもらうための──「価格で選ばせる仕掛け」だ。
この仕掛けを成立させるカギが、“おとり製品”──つまり“本命の劣化版”なのである。
顧客数を急速に増やすには、圧倒的な低価格が効く
顧客が「安いほうでいい」と考えるのは、もはや避けられない現実だ。
しかし、その現実に迎合して、本命製品を安易に値下げしてしまえば──
待っているのは破綻への道だ。
✔︎ 利益率が激減する
✔︎ 値引きが“当然”になる
✔︎ ブランドが安物扱いされる
──こうなれば、もう後戻りはできない。
「安くすれば売上は伸びる」──それは、経営をじわじわと蝕む危険な幻想だ。
まるで、自らの手で、会社に毒を流し込むための点滴を打つようなものだ。
では、どうすればいいのか?
答えはひとつしかない。
本命製品の価値を際立たせるために、“劣化版”を意図的に作るのだ。
これこそが、中小半導体企業が短期間で圧倒的な成果を出すための、
最も現実的かつ効果的な戦略なのだ。
✔︎ “おとり製品”──つまり、スペックを意図的に下げた廉価版を用意せよ
✔︎ 価格は、競合よりも圧倒的に安く設定せよ
✔︎ この“おとり製品”では、利益よりも「数」で勝負せよ
そうすれば、何が起きるか?
顧客はまず“劣化版”を使い、そこで初めて機能の限界を体感する。
そのとき、こう気づくのだ。
「もっと性能がほしい」
「この用途では物足りない」
「もっと省エネにしたい」
──そして、顧客の口から自然と出てくるのはこうだ。
「じゃあ、上位モデルにしておこうか。」
これが、“おとり製品”の真の役割である。単なる廉価版ではない。
本命を選ばせるために設計された、極めて戦略的な“導線”なのだ。
今すぐ「おとり製品」を営業資料に加えよ
「おとり製品」を選ばせ、まずは使わせる──
そして最終的に、本命製品を買ってもらう。
あなたが売上を伸ばしたいのなら、
この流れを明確な販売戦略として実行しなければならない。
その一歩としてやるべきは──
展示会や営業の場で、2つの製品を並べて提示することだ。
✔︎ 「安いが、機能制限あり」の製品
✔︎ 「高いが、価値がある」本命製品
顧客に“選ばせる”構図をつくった瞬間、主導権はあなたの会社に移る。
まずは、導入ハードルの低い廉価な製品を選ばせ、実際に使ってもらうのだ。
そしてその使用体験こそが、次の一手につながる。
体験を通じて顧客は、「本命製品」の真価に気づき始めるのだ。
そう、マーケティングとは「顧客が自ら選びたくなる流れをつくること」である。
あなたが本当に売りたいのは「本命」に違いない。
だが──売らなければならないのは、「本命を売るための劣化版」なのである。
最後に、はっきりと言おう。
技術で売るな。マーケティングで売れ。
あなたがその技術に誇りを持つのなら、“伝わる形”に落とし込む努力にこそ、
時間も資源も投じるべきだ。
そして、今すぐ“おとり製品”を作れ。
それは、あなたの技術を顧客に届けるための、最も確実で現実的な手段なのだ。
これこそが──競争の激しい半導体市場で、
あなたが勝ち続けるための唯一の経営戦略である。