もしあなたが──
「経営陣は技術に強い方がいい。技術を語れない人間は、役員にすべきではない」
「現場で成果を出したエース技術者を役員にすれば、会社はもっと成長するはずだ」
「技術者を役員にすれば、現場重視の姿勢が社内に伝わり、社員から信頼されるだろう」
──そんなふうに考えているのなら、
それは真冬の富士山にTシャツ・短パン・サンダルで登ろうとしているようなものだ。
つまり、その判断ひとつが、会社をゆるやかな破滅へと導く引き金になる。
その代償を払うのは、あなた個人ではない。あなたの会社そのものである。
まず、結論から言おう。
技術者を役員にしてはならない──絶対に、だ。
理由は明快である。
「技術がわかること」と、「売上を伸ばし、コストを削減し、
会社を成長させること」は、まったくの別物だからだ。
にもかかわらず現実には──
「現場を知っているから」
「現場重視の姿勢をアピールしたいから」
──そんな理由だけで、経営も戦略も体系的に学んでいないエンジニアを、
経営の中枢に据えてしまう企業があまりに多い。
その結果、何が起きるか?
・製品開発は表面的には順調に進んでいる
・技術力も資金力も、競合と大きな差はない
・にもかかわらず、市場シェアで競合に後れを取っている
これこそが、企業を静かに蝕む“技術優位なのに売れない病”の正体だ。
しかもこの病は、放っておけば確実に進行し、気づいたときには手遅れになっている。
異変を察知した頃には──あなたの会社は、すでに市場での立場を完全に失っている。
「技術に強い」は経営の武器にならない
技術者を、安易に経営の意思決定に関わらせてはならない。
ましてや、企業の進路を左右するポジションを任せるなど、言語道断である。
なぜか?
彼らは基本的に、「技術力を高めること」以外に、
競争優位を築く手段を知らないからだ。
マーケティング? 経営戦略?──
そうした分野に触れたことすらない人が大半である。
当然といえば当然だ。
そもそも技術者は、「売る」ためのスキルを
学ぶ機会もなければ、求められてもこなかった。
むしろ、“売る”という行為そのものに、どこか距離を置いてきた節すらある。
では、そんな彼らが経営に加わると、何が起きるのか?
技術者出身の役員は、たいていこう考える。
・顧客は、最も技術力のある企業と取引したいはずだ
・だから、スペックで競合に勝てば、自然と売れるようになる
・だからこそ、今以上に技術力を高め続けるべきである
──だが、これらは現実を見誤った危険な幻想に過ぎない。
顧客は、あなたの技術そのものに惚れ込んで製品を選んでいるわけではない。
彼らが重視しているのは、あなたの会社が
「自分たちの課題を解決してくれる存在かどうか」──その一点だけだ。
つまり必要なのは、「自社の技術を語る力」ではなく、
その技術が顧客にもたらす具体的な価値を、
相手の言語でわかりやすく伝えるスキルである。
ここで、一度立ち止まって考えてみてほしい。
顧客はなぜ、あなたの製品やサービスに興味を持つのか?
どんな課題を抱え、どこでつまずき、何を解決したがっているのか?
そして、自社の技術は──今の市場以外のどんな業界で、活かせる可能性があるのか?
こうした問いに真剣に向き合い、仮説を立て、検証し、
外に出て答えを探している技術者が、あなたの会社にいったい何人いるだろうか?
……おそらく、その数は限りなくゼロに近いはずだ。
それにもかかわらず、そうした「顧客を軽視する者」を経営の中枢に据えるとは──
まるで、地図もコンパスも持たない者に、戦場の“作戦本部”を任せるようなものだ。
戦略なき技術者に経営判断を委ねていては、ビジネスの世界で生き残れるはずがない。
経営陣には技術知識よりも、“利益を生む力”が求められる
この問題の解決策は、驚くほどシンプルだ。
「技術をどう売上に変えるか」を理解している人物を、
経営の中枢に置くこと──それだけでいい。
その人が“技術に詳しいかどうか”は、重要な要素ではない。
たとえ製品の細かな仕様を把握していなくても、まったく問題ない。
そうした情報の収集と管理は、営業や現場の担当者が担うべき領域であり、
経営陣や管理職が担う仕事ではないからだ。
つまり──経営陣や役員に求められるのは、ただひとつ。
それは「売れる仕組み」、つまり、少ないコストで
最大の利益を生み出すビジネス構造を設計することだ。
必要なのは、技術知識ではない。
真に求められているのは、次のような“事業を伸ばすための経営力”である。
✔︎ 顧客の立場に立ち、自社の技術を“導入メリットや成果”としてわかりやすく伝える力
✔︎ 売上と利益を最大化するための、戦略的かつ合理的な意思決定力
✔︎ 優秀な人材を見極め、組織全体を強く成長させていくマネジメント力
──これらの能力はすべて、その人が技術にどれほど精通しているかとは無関係だ。
なぜなら、経営とは“技術の知識量”を競う場ではなく、
“利益を生み出す仕組み”を構築し、それを実行に移せるかどうかの勝負だからである。
つまり、役員に求められているのは、技術への理解の深さではない。
市場で勝てる人材かどうか──それこそが、唯一問われるべき基準なのだ。
技術者の経営が、会社の成長を止めている
もし、あなたの会社の経営陣に、
いまだ「技術者の視点しか持たない人材」がいるのだとしたら──
そのままでは、やがて企業の成長は確実に鈍化していく。
なぜなら、経営とは「戦略を立て、顧客の心理を読み解き、
持続的に売上と利益を生み出す仕組みを設計する仕事」だからだ。
単に「現場を理解している」だけの人間では、
企業全体を導くビジョンを描くことなど到底できない。
だからこそ、あなたの会社が次のステージへ進むためには、
経営にふさわしい人材とは誰か──その前提から見直さなければならない。
その改革を成し遂げられるのは──他ならぬ、経営者であるあなた自身だ。
まずは、売上と利益を生み出せる“マーケティングの設計者”を、
経営の中枢に迎え入れることから始めてほしい。
つまり、いまのあなたが実行すべき具体的なアクションは以下である。
✔︎ 経営会議のメンバー構成を、ただちに見直すこと
✔︎ 「技術を語れる役員」ではなく、「売上を生み出せる役員」を選ぶこと
✔︎ 社内に適任者がいなければ、社外からヘッドハンティングすること
この人選こそが、あなたの会社を“売れる企業”へと
進化させるための、決定的な一手となる。
なぜなら、企業が進化できるかどうかは、
結局のところ「誰を選ぶか」にかかっているからだ。
そして、その人選を誤ったまま、
見直しを怠る企業には共通する末路がある。
それは、誤った人選を認めずに正当化し続けた結果、
組織の内側から静かに崩れていくということだ。
そのような企業は、技術者を役員に据えるリスクに気づいていながらも、
「現場重視」姿勢をアピールするためだけに、その人事を続けてしまう。
一方で、勝ち続ける企業は違う。
自らの人選ミスを認め、まず「人の入れ替え」から改革に着手している。
あなたの会社は、どちらを選ぶのか。
このまま技術者を役員として据え、停滞を続けるのか。
それとも、勝ち続ける組織へと進化する道を選ぶのか。
その決断を下せるのは、他でもない。
経営者である、あなた自身なのだ。