もしあなたの会社に、明文化された「広告費の方針」が存在しないのなら──
それは、戦場に武器も持たずに突入する兵士と同じだ。
丸腰で生き残れるほど、現代の市場は甘くない。

広告費は、景気や売上に応じて調整する“贅沢費”ではない。
それは、「市場で生き残るための武装」に他ならず、
決して削ってはならない“戦闘資源”である。

「売上が良ければ広告を打つ」
「展示会には出るが、成果には無頓着」
「広告は代理店との“お付き合い”だから仕方なくやっている」──

そんな甘い姿勢のままでは、
あなたの会社は近い将来、確実に“市場からフェードアウトする側”に回る。
では、どうするべきか?

✔︎ 広告費は、予算の“固定費”として必ず確保せよ
✔︎ 不況時でも、1円たりとも削ってはならない
✔︎ 売上が悪いときこそ、「攻めの一手」として投資せよ

広告費を“変動費”扱いにしている時点で、その戦いはもう負けている。
──これが、現代の半導体マーケティングにおける、最低限の出発点である。

広告費を流動費扱いにすると、必ず“真っ先に”切られる

どんな会社でも、売上が落ちれば「コスト見直し会議」が開かれる。
そして、その場で最初に俎上に載せられるのは──何か? 想像してみてほしい。

社員の給料? 切った瞬間、退職ドミノが始まる。
オフィスの賃料? 契約期間の縛りがあり、簡単には動けない。
研究開発費? 技術者が猛反発し、社内の士気が崩壊する。
自社の陸上チーム? 社長が駅伝マニアなら、永遠に“手出し無用”の聖域だ。

──そう、結局いつも、真っ先に犠牲になるのは「広告費」なのである。
だが、ここで問いたい。
「広告費を削った結果、業績が回復した企業」を、あなたは見たことがあるか?

──そんな事例は存在しない。なぜならそれは、
灯りが弱くなったロウソクに向かって、自ら息を吹きかけて消すようなものだからだ。

むしろ広告費とは、
「売上が落ちているときにこそ、未来を変えるために投じる予算」である。

もちろん、広告費を削れば、一時的には帳簿の見栄えはよくなる。
だがその代償として返ってくるのは──

✔︎ 値引きしなければ売れない、終わりなき価格競争
✔︎ 反応ゼロの営業活動と、膨れ上がる人件費
✔︎ 顧客に選ばれず、比較すらされない「無名状態」

つまり、広告費を削るという行為は、
「未来の売上を、今この場で自分の手で潰している」ことに他ならない。

1年間の売上計画から逆算し、具体的な広告予算を組め

「広告費の決め方がわからない」──
その悩みの原因は、ただ一つ。“売上目標が曖昧”だからである。

だが安心してほしい。
以下に紹介する「3つのステップ」と「1つのマインドセット」を実践すれば、
あなたの会社でも、即日で“勝てる広告費設計”が可能になる。

ステップ1:年間売上目標を「数字で」叩き出せ

「去年と同じくらいで…」
「前年比10%アップを目指したいですね」
──そんな“ふわっと経営”は、今日限りでやめよう。

目標は、あいまいな願望ではなく、明確な数値で定めるものだ。
責任者を明示し、期限を切り、コミットする。

たとえば「今年度の売上目標は10億円」と明言する──
これが広告戦略のスタートラインである。

売上目標がなければ、広告費は決められない。
広告費が決められなければ──売上目標など単なる“空想”に過ぎない。

数字のない広告設計は、
スピードメーターの壊れた車で高速道路を突っ走るようなものだ。

自分がどれくらいのスピードで走っているのかも分からない。
──そんな状態で、事故(=失敗)を防げるはずがない。

ステップ2:売上の10%を広告費として“先に固定”せよ

売上目標が決まったら、次にやるべきはただ一つ。
その10%を広告予算として、年度初めに“死守すべき固定費”として確保せよ。

売上目標が10億円なら、広告費は最低でも1億円。
「それって高すぎないか?」──そう思ったなら、
あなたの感覚は、すでに“時代遅れ”かもしれない。

たとえば──

✔︎ IT・ソフトウェア業界では、売上の約10%をマーケティングに投資1
✔︎ 製造業におけるマーケティング予算の平均は、売上の約9.8%2
✔︎ SaaS企業では、販売・マーケティング予算が売上の38%に達することも3

あなたの会社はどうか?
10%どころか、1%未満ではないか?
それでは勝負の土俵にすら立てない。

むしろ、競合が広告費をケチっているなら、それこそが最大のチャンスである。
あなたが3倍、いや2倍の予算を投じるだけで、
競合を一気に引き離すことも可能なのだ。

ステップ3:広告施策は「選択と集中」で組め

広告費を確保したからといって、やみくもに使っては意味がない。
本当に成果を出すためには、使い道にこそ戦略が必要だ。

✔︎ 展示会
「出ることに意味がある」などという時代は終わった。
「来場者を→メルマガ登録させる→週3のメール配信→商談化」
この導線を設計できなければ、ただの営業部の遠足でしかない。

✔︎ ネット広告
「出せば成果が出る」は20年前の話。
ネット広告は「運用」×「ホームページ最適化」×「セールス動画」の
三位一体で取り組まなければ、まったく効果は出ない。

✔︎ SNS運用
「今月はフォロワーが100人増えました!」「いいねが1000を超えました!」──
そんな報告しかできない広告代理店やSNS運用会社とは、即刻契約を解除せよ。

やるべきことは明白だ。
「なんとなく続けている施策」は今すぐ切り捨て、
「売上に直結する施策」だけに資源を集中せよ。

広告費の総額は、絶対に削るな。
削るべきは──成果を生まない「無駄な施策」だけである。

マインドセット:広告費は「投資判断」である

「売上の10%を広告費に充てよ」と言ったが、
それはあくまで“最低ライン”であり、決して上限ではない。
本気で市場を取りに行くのなら──その比率を、15%でも20%でも引き上げろ。

勝負をかけるべき製品やサービスがあるのなら、
売上が出ていなくても構わない。
“先行投資”として、5000万円でも1億円でも、迷わず突っ込め。

たとえば、新製品・新サービスの立ち上げ初期。
この最初の3ヶ月で十分な認知が取れなければ、
競合に先を越された瞬間、あなたの会社は“後発組”に転落する。

しかも、一度出遅れれば──
巻き返すのに2倍の時間と、3倍の広告費が必要になる。
つまりこれは、“今やるか、あとでもっと払うか”の二択である。

広告とは、「未来の売上を先に買う」ための行為だ。
売上が出てから広告を出す──
それは、魚がいなくなった釣り堀で竿を垂らすようなものだ。

この本質を理解できない者に、
経営者としての資格はない。
管理職としての資格もない。
ましてや、マーケティングを語る資格など、あるはずがない。

広告費は「攻めの投資」だと再定義せよ

広告費を「経費」として扱っている会社に、未来はない。
広告費を、代理店との「お付き合いのための支出」と考えている会社にも、未来はない。

広告費とは──
「市場を奪うための攻撃力」であり、「未来を切り拓くための武器」である。

もしあなたの会社が、営業頼みの昭和的な戦い方から脱却したいのなら、
広告費には1円たりとも手をつけてはならない。
むしろ、社長自らが“攻めの予算”として最優先で確保し、最前線に投下せよ。

TSMCやNVIDIAが市場を支配しているのは、技術力だけの結果ではない。
彼らは「売る仕組み」を、膨大な予算を投じて先に構築している。
だからこそ、景気の波に左右されず、圧倒的な優位を維持できているのだ。

それでもあなたは、まだ広告費を「余裕ができたときに使うもの」と考えてはいないか?
「効果が見えづらいから信用できない」と、都合のいい言い訳で先送りしてはいないか?

──その油断と慢心こそが、あなたの会社を、
“竹やりで戦車に挑む”ような無謀な戦いに追い込んでいるのだ。

広告費は、売上が落ちたときこそ“死守すべき聖域”である。
たとえ月末の資金繰りが厳しかろうとも、広告費だけは絶対に削るな。

あなたの会社が、これからも勝ち続けるのか?──それとも静かに消えていくのか?
その分かれ道は、たったひとつの意思決定にかかっている。
すなわち、広告費を「コスト」ではなく「聖域」として固定化できるかどうか、である。

  1. Sopro – The State of Marketing Spend 2025 ↩︎
  2. WebStrategies – How Much Should Manufacturers Budget for Marketing in 2023? ↩︎
  3. Saleo –「Sales and Marketing as a Percentage of Revenue | SaaS Guide」 ↩︎