「顧客は全員、平等に扱うべき」──その考えこそが、あなたの会社を殺す

もし、あなたが──
「全ての顧客を平等に扱えば、企業イメージが良くなる」
「当社は差別しない。すべての顧客に同じサービスを提供する」
「顧客を平等に扱うことこそが、経営者としてのあるべき姿だ」

そう信じているとしたら──
あなたはすでに、“自滅コース”に足を踏み入れているかもしれない。

いや、もはやそれは「慈善活動」という名を借りた“経営ごっこ”だ。
少なくとも、利益を生み出し、企業を成長させる本物のビジネスとは言えない。

あなたが目指すべきは、「すべての顧客に好かれること」ではない。
自社の価値を正しく理解し、継続的に利益をもたらしてくれる──
そうした「最重要顧客」から熱狂的な支持を得て、安定した収益構造を築くことだ。

そのためには、顧客を見極め、注力すべき相手を選ばなければならない。
限られた経営資源を、最も成果につながる顧客に集中させることが求められるのだ。

その姿勢こそが──
“勝ち続ける会社”と、“静かに沈んでいく会社”とを分ける決定的な分岐点となる。

「全員同じ対応」は、顧客への最大の裏切りである

マーケティングの世界には、誰もが一度は耳にした有名な法則がある。そう──
「売上の8割は、たった2割の顧客から生まれている」というパレートの法則だ。

これは単なる理論ではない。
現場に立てば、誰もが実感する“現実”そのものである。

では、あなたの会社は──
この法則の重要性を理解し、実際の経営に反映できているだろうか?

✔︎ 年間で数千万円を発注してくれる「既存顧客」
✔︎ 10年近く取引を続けてきた「お得意様」
✔︎ 資料請求をしたばかりの「見込み客」

──この3者すべてに対して、
同じ価格、同じサービス、同じ熱量で対応してはいないだろうか?
もしそうであれば、それは「最重要顧客」への明らかな裏切りだ。

“誰にでも平等に接する”という昭和的な美徳は、
もはや現代のビジネスでは通用しない。

“誰にでもいい顔”をしているうちに、
本当に守るべき顧客が、静かにあなたの元を離れていくのだ。

考えてみてほしい。
“将軍”に“大佐”と同じレベルの警備しかつけない軍隊が、
戦場で生き残れるだろうか?

ビジネスも同じである。
誰を守り、誰に注力すべきかを見誤れば、組織全体が崩れていく。

“差別”は悪ではない。それは戦略である

あなたの会社において、すべての顧客が同じ価値を持つとは限らない。

たとえば──
✔︎ 毎年、数千万円単位の契約を即決してくれる「お得意様」
✔︎ 今回1回だけ、お試しで契約してくれた「新規顧客」
✔︎ 資料請求だけして、それ以降連絡のない「見込み客」

──この3者すべてに、同じ対応をしてはいないだろうか?
もしそうなら、それはプロフェッショナルな経営とは言えない。

たとえるなら、親友の結婚式と、ほとんど面識のない知人の結婚式──
どちらにも同じ額のご祝儀を包むようなものだ。
相手との関係性や重要度によって、配慮の度合いを変えるのは当然のことだ。

実際、マーケティングに長けた企業は、顧客を明確にランク分けしている。
具体的には、以下の3つの指標でスコアリングを行い、
「誰に時間と資金を集中すべきか」を判断している。

✔︎ 最終購入日
✔︎ 購入頻度
✔︎ 購入金額

そして、上位ランクの顧客には、ためらうことなく“特別扱い”をする。
たとえば──

✔︎ 技術相談専用のホットラインを開設
✔︎ 営業・技術担当者を専任でアサイン
✔︎ 製品ロードマップの先行共有
✔︎ VIP顧客限定のセミナー招待
✔︎ 納期・価格への柔軟な対応 

これらを、「差別」「えこひいき」だと捉えるのは誤解である。
これはビジネスにおける“戦略的な誠意”であり、
限られた経営資源を最も効果的に配分するための、合理的な判断なのだ。

最も守るべき顧客を、あなたは見誤っていないか?

多くの企業が、こう考えている。
「長年の付き合いがあるのだから、多少対応が雑でも問題ないだろう」と。
一方で、そうした企業ほど、新規顧客には過剰なほど手厚く対応している。

✔︎ 新規客限定のプロモーション価格
✔︎ 初回だけの特別サービスを連発
✔︎ 展示会では、名刺をくれた人全員に高価な手土産

──まるで、“初対面の女性にだけ優しくする浮気男”のようだ。

だが、本来、最も大切にすべきは誰だろうか?
それは、長年にわたりあなたの会社を支えてきた“お得意様”にほかならない。

気づいてほしい。
今まさに、あなたのライバル企業が、そのお得意様を奪おうと動いている。

あなたの会社より安い価格を提示し、
より柔軟な条件を出し、
さらに深く踏み込んだ提案を持ちかけることで──
少しずつ、しかし着実に関係を築こうとしている。

あなたが長い時間をかけて信頼関係を築いてきた顧客を奪うのは、
決して簡単なことではない。

それでもライバルがそこに時間とお金をかけるのは、
あなたがその顧客への対応を、“甘く見ている”と見抜いているからに他ならない。

そして何より──あなた自身も、その事実にうすうす気づいているはずだ。
それでもなお、「お得意様だから、きっと次も契約してくれる」と、
油断してはいないだろうか?

その自信、本当に確かなものだろうか?
それは、単なる“慢心”ではないのか?

いずれにせよ、今の姿勢を改めなければ、
「次の発注」は、あなたの会社には回ってこない。

迷うな、差別せよ──それがプロの仕事だ

「全員を平等に扱う」という“優しさ”は、現場ではただの無責任でしかない。
ビジネスにおけるプロとは、限られたリソースを、
最も価値のある相手に、最も適切な形で届けられる人のことである。

この視点に立てば、マーケティングとは、“顧客の選別”そのものである。
万人にウケる必要はない。全員に好かれる必要もない。

重要なのは、「この会社だけが、自分たちを本当に大切にしてくれている」
──そう顧客に感じさせることだ。その瞬間、あなたの勝利はほぼ確定する。

“誰にでも平等”を掲げる会社は、結局、誰からも選ばれない。
“選ばれた顧客”だけを徹底的に大切にする会社だけが、熱狂的な支持を得られる。

だからこそ、
最後にはっきりと言う。

ためらうな。
顧客は徹底的に“差別”せよ。
勝ちたければ、“誰を優遇するか”を明確に決めなければならない。

それこそが──
あなたの会社が「選ばれる会社」へと進化するための、
最初にして最大の決断である。